2016年12月16日発行 1457号

【市民に牙むく安倍政権/沖縄は改憲前夜=^不当逮捕で運動つぶし画策】

 安倍政権による沖縄への無法きわまりない弾圧がエスカレートしている。国家権力を振りかざして国民を服従させようとする姿はまさに改憲前夜だ。

山城議長を再々逮捕

 沖縄県警は11月29日、沖縄平和運動センター山城博治議長ほか3人を威力業務妨害の疑いで逮捕した。

 逮捕容疑は、辺野古新基地建設工事阻止行動に関するもの。「今年の1月28日午後2時5分頃から30日午前8時41分頃にかけてキャンプ・シュワブゲート前にコンクリートブロック1400個余りを幅5メートル高さ2メートルに積み上げたうえで、車両前に立ちふさがるなどで工事関係車両の搬入業務と沖縄防衛局の業務を妨害した」という。

 接見した三宅俊司弁護士は逮捕の根拠となった事案について「市民は警察の目の前でブロックを積み、その翌日に警察がそのブロックを撤去する、という行為が繰り返された」と警察の監視下で行われていた点を指摘。「威力業務妨害なら、警察はブロックを積む前に市民を止めるべきだ」とし「1年近くたって逮捕したのは異常」と批判している(11/30琉球新報)。

「権利・自由」の否定

 警察は「個人の生命、身体及び財産の保護」「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締まりその他公共の安全と秩序の維持」あたることを責務とする(警察法第2条第1項)。

 弁護士の指摘どおり、警察の監視下で行われた威力業務妨害なら、「犯罪の予防」としてその場で制止しなければならないし、現行犯逮捕も可能だ。それを放置した上で、10か月後に逮捕するのは異常であり不当だ。

 山城議長は辺野古新基地建設反対運動だけでなく東村・高江でのヘリパッド建設反対運動のリーダーでもあった。沖縄県警は10月17日、高江で抗議行動中の山城議長を「有刺鉄線を切った」として器物損壊容疑で現行犯逮捕。勾留請求が裁判所に却下されると、10月20日、8月22日の抗議行動中の公務執行妨害などで再逮捕し勾留を続けていた。

 山城議長の抗議行動指揮は非暴力を貫いたものだった。混乱をもたらしていたのは常に警察側の暴力的な市民弾圧だ。山城議長を逮捕したのを機に、県警は平和運動センターやキャンプ・シュワブゲート前テントなど4か所を家宅捜索しパソコンなどを押収した。威力業務妨害の送検で、家宅捜索は必要ない。山城議長の逮捕・長期勾留によって運動の混乱を図り、家宅捜索で反対運動に参加する市民を委縮させるのが狙いだ。高江でのヘリパッド建設工事を強行し、辺野古新基地建設を再開させることをもくろむ安倍政権は、反対運動の切り崩しを図ろうとしている。

 警察法は「その責務の遂行にあたっては、不偏不党かつ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法 の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用(らんよう)することがあってはならない」(第2条第2項)と警察活動を制限する。安倍政権の意図をくんだ今回の逮捕・家宅捜索は「不偏不党かつ公正中立」に反し、「個人の権利及び自由の干渉」にあたる「権限の濫用」だ。

権力の暴走に歯止めを

 沖縄での警察権力などによる暴力や違法行為は何度も批判されてきた。

 高江では、市民の首を絞め宣伝カーから引きずり下ろした。暴力的な排除で、何人もの市民が負傷し、救急搬送されることも度々。診療した医師が「まるで拷問を受けていたようだ」と述べるありさまだ。辺野古では海上保安官が抗議船を転覆させ、「艦船転覆罪」で告訴されている。女性を水面下に三度にわたって引きずり込み海水を飲ませる、工事船に向かって泳ぐ市民に船体を衝突させるなど命にかかわる暴力をふるっている。

 ヘリパッド建設で防衛局や工事業者は、環境保護法制違反など各種法令・条例違反も次々と犯している。

 大阪府警から派遣された機動隊員は、抗議行動の市民を「クソ」「ボケ」とののしったあげく、悪意を込めて「土人」「シナ人」との言葉を投げつけた。松井一郎大阪府知事・日本維新の会代表は「表現に問題がある」とするのみで「無用な衝突が起こらぬよう職務を遂行している」と擁護するばかりか、「個人を特定して、大メディアも含めて叩くのはやりすぎ」と問題をすり替えた。本来なら市民に対して「クソ」「ボケ」と言った時点でアウトだ。それに輪をかけた言葉の暴力は、機動隊員個人だけではなく抗議行動に参加する市民蔑視(べっし)であり、警察をはじめ行政権力側によるヘイトクライムそのものだ。

 沖縄県民は、地方選挙・国政選挙でくり返し基地建設に反対の民意を突き付けてきた。責められるべきは、主権者であり地方自治の主人公である県民の民意を踏みにじる行為を暴力を背景に強行する安倍政権だ。

 沖縄では、憲法で縛られるべき為政者の手で国民主権・基本的人権の尊重・表現の自由・地方自治が否定され、憲法が踏みにじられている。その張本人は改憲を目指す安倍であり、改憲の盟友である日本維新の会など改憲勢力だ。諸外国に対して「法の支配」を口にしつつ、国内法・憲法無視で法の支配を破壊している。彼らはすでに憲法を意に介していない。

 沖縄での権力の暴走にストップをかけることこそ緊急に問われる改憲阻止の運動だ。



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