2016年12月16日発行 1457号

【みるよむ(422) 2016年12月3日配信 イラク平和テレビ局in Japan 売り飛ばされる 外国人労働者の内臓】

 2016年10月、サナテレビはイラクで起きているおぞましい人権侵害についてとりあげた。イラクにやってきた外国人労働者が人権を守られないばかりか、内臓が抜き取られてギャングたちによって売買されているという事実である。

 サナテレビのサジャド・サリームさんがバグダッド州当局筋を取材した事実を報告する。政府の保健省と組織ギャングが共謀してバングラデシュなど外国人労働者の死体から内臓器官を盗み取っているというのだ。

 市民活動家は「入国した外国人労働者は何の権利も守られず、お金を盗まれ、殺され、内臓を盗み取られている。イラク国内でグローバル・マフィアが新しいシナリオを描いている」と指摘する。恐ろしくショッキングな事態だ。

 サナテレビは、保健省の広報部長に対してインタビューを試みた。広報部長は「保健省の省内でそんなことは起こり得ない」と否定する。「人間の臓器の売買には法律があって患者の命を救うために他の人を殺すことはできない」と弁明する。だが、ギャングに腎臓を取り去られ、それが売り飛ばされて民間の病院にたどり着く事例があることは認めざるをえない。

無権利状態の外国人労働者

 外国人労働者の内臓が政府の病院の中で抜き取られ、その死体は路上か法医学の研究室に投げ出されているのが実態なのだ。

 なぜ、こんな痛ましい事件が起こきるのだろうか。背景に、イラクをはじめとした各国で、バングラデシュなどアジアの貧困国の労働者を安い労働力として大量に導入していることがある。その多くが臨時の契約労働者として働き、安全も保障されていない。そんな弱い立場の労働者をマフィアが付け狙っている。

 ある作家は「イラクは市民と外国人労働者の問題をつなぐ法律も制度もないので、外国人労働者が誘拐され、臓器を奪われて死体はうち捨てられるのだ」と指摘する。これは個別の犯罪行為ではない。「国際的な問題であり、国内でも国外でも解決することが必要だ」と主張する。

 国内で大量の失業者を生み出す一方、低賃金で無権利の外国人労働者を導入するグローバル資本のやり口が今回の事件を引き起こしている。サナテレビはこうした搾取と人権侵害に対して闘おうと訴えかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
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