2016年12月23日発行 1458号

【カジノ法案強行 維新を抱き込み ギャンブル経済にかける安倍政権】

 強行採決を連発する安倍政権がまたもや暴走。ギャンブル解禁、賭博場(カジノ)推進を決めた。

 議員立法とはいえ、官邸主導の「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法」。略称「統合型リゾート(IR)法」とは、要するに犯罪(刑法185条、186条)であるカジノを開設できる区域を自治体が申請し、国が認可する仕組みを定めた「カジノ促進法」だ。これで、すぐカジノが開設できるわけではないが、法施行後1年以内に政府が実施法を整備することとしており、実現に踏み込んだことはまちがない。

 法は、カジノ入場者からは入場料を、カジノ運営者からは納付金を国及び地方自治体が徴収できるようにした。暴力団などを排除するため、「カジノ管理委員会」を設置し、カジノ関係者を規制することになっている。

 推進派は「地域振興の起爆剤」などと効果を語るが、ばくちで人を集め、業者が客から巻き上げた儲けの上まえをはねることが、地域経済の健全な発展に寄与することなどあり得ない。

維新松井の執念

 カジノ繁栄の象徴といわれる米国アトランテックシティでは12あったカジノのうち5か所が閉鎖、失業率は全米平均の1・5倍、市経済は破綻に瀕している。『カジノ幻想』(シグマ新書)などの著書がある静岡大学鳥畑教授はカジノ頼みが自立的な経済発展の芽を摘み、仮に成功しても周辺都市の消費需要を奪い格差を広げるなど、カジノ依存経済の危うさを指摘する。

 カジノの負の効果は経済ばかりでない。いわゆるギャンブル依存症だ。当人とともに家族や周辺の人々を巻き込んで崩壊していく。厚労省の調査では成人の5%弱に依存症の恐れがあるという。米国でも1%だ。すでにパチンコ・スロット、競輪・競馬など世界有数のギャンブル大国日本は、依存症でも大国だ。

 百害あって一利なしのカジノ法。今国会成立に最も固執したのが日本維新の会代表松井大阪府知事だった。「法案は3年前に提出されている。3年間、何してたんや」と審議入りに反対した民進党をバカ政党と言ってはばからないばかりか、「『IR=依存症が増える』。何のエビデンス(証拠)をもって言ってんのかね」とマスコミ報道にもくってかかる(12/2産経)。

 カジノ導入構想は99年石原元都知事の東京・台場誘致にはじまり、大阪では09年橋下前府知事が夢洲(ゆめしま)構想を掲げた。13年に提出されたカジノ推進法は廃案、再提出を繰り返した。「万博(万国博覧会)とセットで圧倒的なにぎわいをつくりたい」とする維新・松井にとって、今国会成立は譲れなかった。カジノ開設には実施法成立後も7年はかかるとされる。25年万博に間に合わすには今国会がタイムリミットだった。

経済破綻は必至

 バブル崩壊後、土地利用が進まぬ夢洲(390f)。南側100fを万博に、その跡地合わせ170fをカジノ用地にあて込んでいる。万博開催に必要な地下鉄延伸などのインフラ整備費用のあてがなかった維新・府市コンビが思いついたのが、カジノ事業者の投資なのだ。松井のもとには早くも米国やマレーシアなど延べ20の大手カジノ事業者のトップが訪問しているという(12/7朝日)。

 「IRで1千万人プラス効果。6万人から7万人の雇用拡大」と豪語する松井。関西経済同友会は開業までに1兆5千億円、開業後は年間7600億円の経済効果があると試算している。だが、思い起こされるのが88年に制定された総合保養地域整備法(リゾート法)だ。バブル経済を背景に、36道府県、42地域でテーマパークやゴルフ場など似たようなリゾート構想を描いた。だが、シーガイア(宮崎・日南海岸)に象徴されるように、ほとんどが破綻した。構想段階で廃止されたものも多い。カジノ統合型リゾートは、さらに深刻な負債を抱え込むことになる。

 昨年の戦争法強行採決に維新を抱き込むため、橋下・松井と大阪カジノ誘致で取引したといわれる安倍・菅。改憲勢力維新の取り込みへのカジノ法強行だ。同時に、安倍自身が、アベノミクスで全く成果を出せない中、文字通りばくちに「経済の起爆剤」を求めたことを意味する。

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