2016年12月30日発行 1459号

【JR北海道「全路線の半分を維持困難」 公共交通破壊の暴挙許すな】

 JR北海道は、島田修社長が11月18日に会見し、宗谷本線名寄〜稚内間など計13区間について、同社単独では維持が困難になったことを公表した。対象区間のうち3区間(輸送密度200人未満)はバス転換が適当とし、残る10区間(輸送密度200人以上2000人未満)についても、上下分離方式(線路・施設を公的主体が保有、鉄道会社は列車運行に専念する運営方式)や地元負担が必要としている。

実質的な経営破たん

 今回の13区間には、根室線帯広〜釧路〜根室間、釧網線東釧路〜網走間など、主要都市間輸送を担う基幹路線のほとんどが含まれている。営業キロで見ても約1200キロメートルに及び、JR北海道全体(約2500キロメートル)の半分に相当する。すべてが廃止や地元負担となった場合、地元の社会経済に与える打撃は計り知れない。

 すでに、JR北海道は「2015年度末までには社員の給与支払いに充てる資金がマイナスに陥る」として国から1200億円の緊急支援を受けている。今回の発表は、実質的にはJR北海道の破産宣言に当たる。緊急支援時の試算では、同社が経営破たんに陥るのは2018年度となっていたが、試算よりはるかに早く破たんした。

 JR北海道は新幹線を含む全線が赤字であり、経営破たんの原因が、北海道だけを単独の会社とした国鉄分割民営化の枠組み自体にあることは当然だ。民営化初年度(1987年度)決算で、JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合はわずか2・5%にすぎなかった。JR北海道全体の営業収入(919億円)は東京駅の収入(約1千億円)より少なく、JR東日本1社だけでJR7社の営業収入の43・1%を占めるなど経営格差は歴然としていた。

 儲かる路線で儲からない路線を支えていた国鉄時代の内部補助制が分割で崩壊した結果、儲かる路線の利益はJR本州3社の経営者が分捕り、北海道、四国、九州の損失は地元自治体・住民に押しつけられた。国鉄解体で1047名の国鉄労働者が路頭に迷い、それ以外にも多くの国鉄労働者が自殺に追い込まれた。東京駅以下の収入のJR北海道に不可能な「自立」を迫り、経営破たんに導いた。このような事態を招いた国の責任を追及しなければならない。

 民営化に当たって政府が用意した経営安定基金の運用益が低金利で減少したことに加え、2009年の「高速道路1000円乗り放題」政策で経営を支えていた長距離旅客の自動車への転移も進んだ。これらも経営破たんの原因だ。

「安全か路線か」選択強要

 長距離旅客減少による経営悪化は、安全崩壊となって表面化した。2011年の石勝線トンネル内における特急列車火災事故、2013年、函館本線における貨物列車脱線事故はその象徴だ。組織的に行われていたレール検査データの改ざんは、JR会社法に基づく初の監督命令に加え、強制捜査、起訴によって刑事事件に発展した。

 JR北海道社内に設けられたJR北海道再生推進会議は、同社が民営化以降の30年にわたって本来であれば安全投資に回すべき費用を高速バスや航空機との競争の中で高速化に充てていたと指摘した。相次いだ事故やトラブルは、30年にわたる安全軽視と怠慢の明らかな帰結だ。再生推進会議は、こうしたJR北海道の安全軽視と怠慢を棚に上げ、「安全か路線かの二者択一」を会社に迫る提言をまとめた。地域公共交通を守ろうとする地元の意思を無視した一方的提言を認めることはできない。

 財政規模の小さい市町村に線路・施設の保有を求めるJR北海道の姿勢は、自治体に「地元負担は不可能」と言わせる廃線誘導であり、公共交通事業者としての責任放棄だ。

交通権奪う廃線阻止を

 北海道で生産された農産物は、全国に鉄路で運ばれ消費されている。この陰には、保線や除雪などの莫大な経費を、北海道民が本州より高い運賃を通じて負担している事実がある。道民に一方的に危険やコストだけを押しつけるのは、原発や基地問題と同じだ。

 国鉄分割民営化当時の廃止路線は旧産炭地の路線や盲腸線(行き止まりの路線)が中心だったが、それでも廃止路線は北海道全体の3分の1に及び、地域は衰退した。今回も、過去の水害や台風による運休区間で車いすの障がい者がバスに乗れないため移動できなくなるなどの実害が出ている。住民の交通権を奪い、生活を破壊する路線見直しを阻止することが必要だ。
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