2017年01月06日・13日発行 1460号

【ミリタリー 社会の軍事化へ動き強める自衛隊 地域への浸透を許さない】

 戦争法の下で急速に進む「戦う自衛隊」への変貌。それに連動して、市民社会の軍事化が周到に準備され、全国で進められている。

 この活動を中心的に担うのが「自衛隊地方協力本部」だ。協力本部は防衛省の機関の一つで、「自衛隊に関するお問合せ先、窓口」と自らを紹介する。業務内容は、(1)危機管理―国民保護法に基づく要員派遣、連絡調整など(2)募集―入隊志願者の応対など(3)広報―各種催事を通じての広報活動などとされる。

 「各種催事を通じての広報活動」の典型例が、大阪・堺市での堺まつりにおける大型輸送艦(強襲揚陸艦)「おおすみ」や護衛艦(駆逐艦)、掃海艇など自衛隊艦船の「一般公開」だ。堺まつりに合わせて「一般公開」行事を実施することで、協賛事業、関連行事に指定させ、まつりに組み込ませる手法だ。市民の抗議と追及にもかかわらず、10年連続で強行された。今年はほとんど同じ内容を「防災フェスタ」と名を変え、堺市と堺市観光コンベンション協会が後援することで自衛隊との協力関係強化に一歩踏み込んだ。

 こうした「一般公開」は全国で実施されている。

 また、自衛隊は「広報活動」を市役所や学校など地域の隅々にも広げている。

 大阪・守口市では市役所庁舎に自衛隊大阪地方協力本部守口出張所が「入居」。市庁舎規則にある「目的外使用」に該当というが、他に入居している社会福祉協議会や社会保険事務所とは違い、自衛隊の出先窓口が市民サービスにつながるとの理屈は無理がある。

 大阪・和泉市では、中学校区のイベント(「ふれあいクリーン作戦」)で、自衛隊の炊き出しが行われた。その際、中学校敷地内に自衛隊テントが張られ、防災活動パネル展示と合わせて自衛官募集が行われた。

 自衛隊と消防のコラボ募集ポスターも作られている。大阪地方協力本部と府下市町村消防本部によるもので茨木、枚方(ひらかた)、寝屋川などの市消防本部と自衛隊が左右半分ずつの隊員募集ポスターを作成している。

 地域や自治体との連絡調整を口実に、自衛隊がめざす「広報活動」。その最たるものは、長崎・佐世保の商店街で毎年強行されている迷彩服姿のパレードだ。水陸機動団が新設される日本版海兵隊=A西部方面普通科連隊・相浦駐屯地の陸自隊員が小銃や拳銃を携行して行軍する。また、北海道・東千歳駐屯地から苫小牧港までの公道約30キロを戦車が自走する「長距離機動訓練」も同様だ。まさに「本当の自衛隊の姿を知ってもらい、理解を得る」。公然たる軍隊としての市民権を得ることが目標だ。

 だが、市民が声をあげることで自衛隊の計画を中止に追い込んだ事例もある。

 福井県小浜市では、商店組合主催の花火大会で、自衛隊側からの装甲車展示の打診を主催者が断った。前年の装甲車展示に対して、「市民の祭りにふさわしくない」などの苦情が複数寄せられたためだ。

 神戸市の小学校では、4〜6年生に自衛隊兵庫地方協力本部長が講話、全児童を対象に校庭で自衛隊の災害対策機材を展示・実演するという「防災教室」が計画されたが、保護者らの抗議で中止に追い込んだ。

 自衛隊の地域への浸透の動きを見逃さず、一つひとつ抗議の声をあげていこう。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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