2017年01月06日・13日発行 1460号

【京都原発賠償訴訟口頭弁論/原告避難全世帯の本人尋問始まる/命と真剣に向き合ってほしい=v】

 福島第一原発事故による京都府への避難者58世帯175人が東京電力と国に損害賠償を求めた京都原発賠償訴訟の第20回口頭弁論が12月14日、京都地裁(浅見宣義裁判長)で開かれ、原告4人への本人尋問が行われた。原告は、避難を決意した理由、避難生活の現状などを訴え、東電と国の不当な対応を暴いた。

 いよいよ原告本人尋問が始まるとあって、地裁には過去最高の140人の傍聴希望。午前中のみの傍聴者の傍聴券で午後から法廷に入った支援者もいた。開廷に先立ち、公正な判決を要請する署名37団体、3487筆が地裁に提出された。

過酷な避難の現実

 本人尋問で、福島県相馬市から京都府木津川市に2人の子どもと避難している福島敦子さんは「死ななければいいというものではない。生命とは何か、真剣に向き合ってほしい」と述べ、「体質を改めない限りまた事故が起きる」と東電の姿勢を批判した。また、「福島県民は他の地方に住む人の20倍の放射能耐性を持っているわけではない」と、法令による公衆被曝線量許容値年1_シーベルトと、避難指示区域となる基準値20_シーベルトが使い分けられている矛盾を指摘した。

 妻と子どもが京都市に避難し自身は福島市で働く吉野裕之さんは「除染の情報が公開されないなど東電と国の対応に不信感があり、自分で測定した」と証言。子どもを福島に残すことはできないと避難を決意した経緯を説明した。

 福島市から宇治市に避難している菅野千景さんは、福島で抜け毛や鼻血など子どもの健康被害に直面し、不安を除くために避難を決断した。夫が妻子の住む京都とは別の場所で働かざるを得なかった深刻な現実を、声を詰まらせながら切々と訴えた。

 茨城県北茨城市から京都市に避難している川崎安弥子さんは「子どもを守るのは自分しかいない。行政の情報は信用できないので自分の判断で避難を決めた」。「空間線量のデータだけでなく土壌汚染のデータが公開されなければ健康を守れない」と行政の対応を厳しく批判した。

 証言中思いがこみ上げる証人に共感し、涙ぐむ他の原告や傍聴者らの姿も。4人の原告は、避難先から福島に戻らない理由について、共通して「原発事故は収束していない」「事故前の状態に戻っていない」ことを挙げた。

 被告東電と国による原告への反対尋問では、収入をはじめプライバシーに関わる細かい質問の他、事故以前から反原発活動をしていたか、福島に残った家族がなぜ避難しなかったか、などの質問が繰り返し浴びせられた。原告を特定の思想の持ち主と描き出し、周囲とは違う特異な判断で避難したものと印象づけようとの陰湿な質問が目立った。

58世帯が証言へ

 弁論終了後、弁護士会館で記者会見が行われ、4人の原告は「情報が十分に公開されず知る権利が奪われている」「核を扱っている仕事だという責任と自覚がなさ過ぎる」などと述べ、国、行政機関、東電の姿勢を批判。原告団共同代表の福島さんは「命と本気で向き合ってほしい」と重ねて訴えた。

 この日の弁論を皮切りに原告全世帯について本人尋問が行われる。全国の原発賠償裁判の中でも異例の訴訟指揮であり、原告と弁護団、支援する会はよりいっそうの傍聴支援を求めるとともに、公正判決要請署名への協力を呼びかけている。http://shienkyoto.exblog.jp/

 今後の弁論日程は次の通り。

 1月13日(金)原告本人尋問/1月27日(金)専門家証人尋問/2月17日(金)専門家証人尋問/3月8日(水)原告本人尋問/3月29日(水)原告本人尋問。いずれも京都地裁10時15分開廷。傍聴希望者の抽選受付は、地裁玄関前で9時35〜50分。



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