2017年01月20日 1461号
【軍事費過去最大を更新／戦争と貧困の２０１７予算案】
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１月20日開会の通常国会で２０１７年度予算案審議が始まる。軍事費は５年連続過去最大を記録した。戦争国家づくりを進め、市民に貧困と生活苦を強いる予算案だ。
社会保障費1400億削減
12月22日、97兆４５４７億円の予算案が閣議決定された。
政府は「高齢化社会の進展と医療の高度化による社会保障費増」を強調する。
だが、その社会保障は自助を強要する骨太方針（２０１５年閣議決定）に沿って、６４００億円と見込まれた自然増分を５０００億円に削減した。70歳以上の高額療養費自己負担上限額の引き上げ、後期高齢者医療保険料増、介護保険サービス自己負担増が中間所得者層にまで課せられる。
削減の口実に「社会保障財源の厳しさ」が持ち出されるが、日本では国と事業主負担がきわめて低い。社会保障費の事業主負担はフランス・ドイツなど欧州の２分の１から３分の１だ。加えて、賃金の低下がある。社会保険料は所得に対して一定の比率で徴収される。非正規雇用が40％を超え、正規・非正規を問わず賃金を切り下げられ、保険料収入は減り続けてきた。
適正な国・事業主負担と賃上げ・非正規雇用撤廃がなければ、今後の社会保障費増大には対応できない。
「一億総活躍社会の実現」と銘打った保育・介護対策。人材不足対策とされる保育士の処遇改善も若手の役職者で５０００円程度の引き上げにとどまる。他産業月額平均給与額より９万円も低く、平均年収は私立の保育士の平均年収は３１５万円。東京都の公立保育所（公務員）６２８万円の半額だ。全国で進む保育所の民営化が多くの低賃金保育労働者を生み出し、人材不足に拍車をかけている。新自由主義政策による公的部門の民営化が元凶だ。
教育では、月額２～４万円の給付型奨学金を宣伝する。対象は住民税非課税世帯で、試行期間の２０１７年度は２６５０人、本格実施の18年度が２万人だ。大学の平均学費（初年度納付金）が年80万円（国公立）～１３０万円（私立）、奨学金貸与者１３０万人という実態から全くかけはなれたものだ。
公立小中学校の教員数は３２８２人減らす。発達障害や外国人児童生徒指導向けの増員分８６８人を除けば、４１５０人の減だ。予算は22億円減となる。教育現場では、子どもの貧困を背景とする諸問題が広がっており、学級定員減や２人担任制など環境整備は急務だ。教員大幅増が必要で減らすなどもってのほかだ。教員減では、現場は一層の競争教育、児童生徒の切り捨てに駆られることとなる。
５兆円軍事費は「聖域」
社会保障費抑制＝削減と対照的なのが軍事費だ。安倍は軍事費を聖域として扱い、５年連続で過去最大を更新し、５兆１２５１億円に上った。「中国の海洋進出」を前面に出し世論誘導するが、いつでもどこへでも海外派兵、武力行使を狙った殺し殺される戦争国家づくりだ。
きわだった空輸性・機動性を持つ16式機動戦闘車33両２３３億円、水陸両用車11両８５億円、対空型無人機１機１６８億円、ステルス戦闘機６機８８０億円、オスプレイ４機３９１億円等々。大型・高額の侵略兵器が並ぶ。
新たな軍事技術開発のための大学・公的研究機関・民間企業への研究委託費は１１０億円と16年度６億円の18倍に跳ね上がった。軍需産業の育成による兵器の輸出商品化や〝学問の府〟の軍事への取り込みで、戦争国家を支える国内体制作りを狙ったものだ。
軍事とセットで「国益」＝利権のためのＯＤＡ（政府開発援助）も２年連続増の５５２７億円。「地球儀を俯瞰（ふかん）する外交」と称して武力と札束で世界を牛耳ろうとする安倍の本音が透けて見える。
何が「働き方改革」だ
「働き方改革」関連予算では、（１）能力評価制度を整え、賃金アップを図る企業への助成（２）勤務間インターバルを自発的に導入する中小企業への支援（３）同一労働同一賃金など非正規雇用労働者の待遇改善、正社員転換などに取り組む企業を支援―を「目玉」（総額７１３億円）とする。
「改革」と言うが、安倍政権の「同一労働同一賃金」は格差固定化、正規雇用破壊だ。格差撤廃、正規雇用拡大こそまず必要だ。
（１）の能力評価制度導入は、労働者間の熾烈（しれつ）な競争と総人件費抑制の人事政策に導く。（２）の勤務間インターバルは、24時間につき最低連続11時間の休息を求めるＥＵ（欧州連合）労働時間指令にならったもの。労働法制化せず「自発的に導入」で裏を返せば13時間連続勤務の許容といえる。８時間労働原則の労働基準法違反でも助成金を出す政策だ。（３）も、助成よりも、労働者派遣法を廃止し非正規労働を撤廃することこそが先だ。
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軍事費を削り、社会保障・教育・貧困対策に回せの声をいま強めるときだ。 |
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