2017年01月20日 1461号
【未来への責任(216)朴弾劾を実現した韓国民衆の闘い】
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昨年12月9日、韓国国会は朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾訴追案を可決した。賛成票は234、反対票は56、棄権2、無効7。弾劾案成立に必要な票数200(国会議員の3分の2以上)を大幅に超える賛成で弾劾案は国会を通った。世論調査では、弾劾推進が78%を占めており、これを反映して賛成票の比率も78%だった。韓国の国会議員は、野党は言うに及ばず与党議員も市民の声に押されて朴弾劾に賛成したのである。
弾劾理由に「崔順実(チェスンシル)ゲート事件」、経済界(財閥)への資金提供強要(財産権侵害)やセウォル号事件対応の問題などの違憲・違法行為が挙げられている。これらが、韓国市民の強い怒りを呼び起こしたのは間違いないが、それだけではない。
韓国市民は朴弾劾、下野を求めて10月末から毎土曜日に「ろうそくデモ」を開始した。最初は3万人であったが、瞬く間に広がって100万を超え、12月3日には232万人もの人々が朴弾劾を叫んだ。その背景には、「へル(=地獄)朝鮮」と若者が“自嘲”するほどに青年層の生きづらい韓国社会の現実がある。激化する受験戦争、増加する失業率(青年層の失業率は12・5%)、高い自殺率など。これらは李明博(イミョンバク)、朴槿恵と続く保守政権の下で進んだ。朴政権では、労働法の改悪(解雇法)、福祉施策の廃棄等が強行され、さらに「慰安婦」問題が被害者抜きに一方的に「合意」され、歴史教科書の国定化も画策されている。
これに対し、韓国市民は既に昨年4月の総選挙でノーを突きつけていた。4月13日に実施された総選挙で与党セヌリ党は過半数割れの惨敗、第1党の座からも滑り落ちた。事前の予想では、野党の分裂でセヌリ党圧勝が予想されていた。しかし、与党敗北となったのは大幅な投票率アップの青年層を中心に市民が朴政権とその政策を拒絶したからであった。
反朴の意識・潮流が広がる中で暴露された崔順実ゲート事件。これがより多くの市民の怒りに火をつけた。朴大統領は職務停止となり、訴追案は憲法裁判所の審判に付された。憲法裁がどのような結論を出すかは不明だが、200万を超える人々の声を無視することは不可能だ。朴槿恵政権は事実上終わった。
李承晩(イスンマン)独裁政権を倒した1960年4・19学生革命、軍事独裁を退け民主化を達成した1987年6月民衆抗争、韓国市民はその闘いの歴史を脈々と引き継いで朴弾劾を実現した。ソウル光化門(クァンファムン)前広場を埋め尽くした100万超の人々の中から起こった『朝露』(1970年に作られた韓国の代表的なフォークソングで、1980年の光州(クァンジュ)民衆抗争でも歌われた)の合唱が、民衆の闘いであることを象徴的に表していた。
「一強」を誇る安倍政権。しかし、原発も戦争法もTPPもカジノ法も、どの政策も国民から支持されていない。安倍を引きずり下ろすことは可能だ。日本にも希望はある。
(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク事務局長 矢野秀喜)
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