2017年01月20日 1461号

【シネマ観客席/高江−森が泣いている2/藤本幸久 影山あさ子監督 森の映画社 2016年11月 63分/ヘリパッド工事の実態を暴く】

 沖縄島北部、やんばるの森。天然記念物のヤンバルクイナなどが生息する自然の宝庫である。その森の中、米軍北部訓練場の内側にヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)が建設された。原生林が円形に刈り取られた惨状を航空写真で見た方も多いだろう。

 しかし、この森の中で何が起きていたのか知る人は少ない。北部訓練場は米軍の管理下にあり、許可なく立ち入ると刑事特別法(刑特法)で罰せられる恐れがある。このため沖縄の地元メディアさえ現場取材に入らなかったからだ。

 高江で撮影を続ける映画スタッフも対応に悩んだという。だが、「現場に行かなければわからないことがある。市民の知る権利や報道の自由が、米軍を守るための刑特法に優先する」(影山あさ子監督)との思いが彼らを突き動かした。

 藤本幸久監督の言うダイレクトシネマ、つまり「現場の出来事で現実を見せていく」スタイルが本作の持ち味だ。取材カメラは立ち入り禁止区域に入り、ヘリパッド工事の実態に迫る。

 森の中では、「環境に配慮する」という防衛省の説明とは異なり、トラックによる資材搬入道路を造るために大規模な樹木伐採が行われていた。赤土流出防止策も取られていない。乱暴な工事は、安倍政権が「基地負担の軽減」をアピールすべく「年内完成」を急いだことに起因する。

 機動隊、防衛局職員、民間警備会社の警備員に守られ、重機やチェーンソーを操る作業員。その傍らに立ち「お願いします。やめてください。木を切らないでください」と必死で訴える人びと。立ち木にしがみついて抵抗する人もいる。

 これに対し、防衛局の職員は「ここは提供施設です。ただちに退去して下さい」と機械的にくり返す。その声の何と空虚なことか。人殺しの施設を造るために緑豊かな森を日本政府が米軍に「提供」する。その理不尽さに疑問を抱かぬように、人間的な感情を殺しているのであろう。

 山城博治・沖縄平和運動センター議長の不当逮捕・長期勾留など、安倍政権はむき出しの暴力で基地建設を強行しようとしている。影山監督は「この暴挙は沖縄県民の反対だけでは止まらない。私たちの力で安倍政権を倒さなければ止まらない」と訴える。この提起に応え、作品鑑賞・上映運動を広げたい。  (O)

・上映権付DVD1万円。販売や劇場上映の案内は、森の映画社・札幌編集室(http://america-banzai.blogspot.jp/)まで。

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