2017年02月03日 1463号

【未来への責任(217)韓国で「遺骨に関する国際会議」】

 12月19日、韓国国会議員会館で開催された「旧日本軍韓国人戦没者遺骨調査と奉還に関する国際会議」に参加した。日本では「戦没者遺骨収集推進法」の国会議論で塩崎厚労大臣が「韓国政府から具体的な提案があれば真摯に受け止め、政府部内で適切な対応を検討する」と答弁している。しかし、沖縄戦遺骨のDNA鑑定が遺族に呼びかけられる一方で、韓国人遺族を対象にする動きは両政府間で見られないことから、今回の会議が開催された。日本からは沖縄戦遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さんが招かれた。

 主催者であるカン・チャニル国会議員が「アメリカは遺骨一つでも探し出すために平壌(ピョンヤン)まで行っているのに日本では見つけられない。国家は国民の人権を守らなければならない。次期大統領選挙が大切」と挨拶。太平洋戦争被害者補償推進協議会のイ・ヒジャ代表は「今回は議論する場として開催し、次回は日本の国会議員に来ていただいて遺骨返還を実現したい」と話した。

 会議では具志堅さんのドキュメンタリー『ガマフヤー・遺骨を家族に・沖縄戦を掘る』が上映された。田畑一夫さん(10月国会内集会に参加)のお父さんの遺骨がDNA鑑定の結果、家族の元へ帰り、お墓の前で遺族が骨壺をさすりながら「帰ってこれてよかったね」と嗚咽するシーンが印象深い。

 続いて「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会の上田慶司さんは、推進法成立過程の国会行動を通じた成果を報告。厚労省の行っているDNA鑑定については、頭蓋骨がなければ個体性なしと判断され、手足の骨が残っていても鑑定の対象にならずに焼骨される問題点を指摘した。また、沖縄で遺族とのDNA照合呼びかけが始まっているが、そもそも朝鮮半島からの動員者は「行方不明」が多く、韓国政府から日本に対しすべての遺族が照合対象であることを強く主張すべきである、と訴えた。

 私は2015年3月のニューギニア遺骨調査の写真を映しながら、現地の人が畑を耕せば遺骸が発掘される状況を報告。韓国人遺骨返還の突破口としてクエゼリンなど小さな島での発掘遺骸とのDNA照合が鍵になることを説明した。

 韓国行政自治部ヤン・イモ課長からの報告もあった。これまでの返還遺骨の成果を誇張したが、DNA照合をしなければ韓国人だとわからない、という問題意識がないことがよくわかった。会場から課長に対する質問や批判が飛び交ったが、のらりくらりと答弁してその場を切り抜けた。どこの国の役人も同じものだと妙に感心した。唯一のいい話として、「DNA検査対象遺族の検体採取費用として8000万ウォン(約800万円)の予算を確保している」ことが確認できた。

 「沖縄県議会への要請を粘り強く行ってきたことが成果につながっている。間違っていないから、あきらめないことが大事」と韓国遺族へエールを送った具志堅さんの言葉が心強かった。

 国会内集会の翌日、素晴らしい展開が待ち受けていた。(続く)

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 古川雅基)

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