2017年02月10日 1464号

【介護保険改悪反対署名へ 保険料あって介護なし=@国家的詐欺は許さない】

 2017予算案で介護保険制度を含む社会保障関連費用は切り捨ての一方だ。「尊厳ある暮らしを!」連絡会(医療・介護従事者、当事者、家族の会)は、新たに「介護保険負担増反対!尊厳ある暮らしを守るために国庫負担の倍増を求める署名」を始める。同連絡会の畑廣昭さんから呼びかけが寄せられた。

 介護を社会的に担うとして2000年に始まった介護保険制度。それは、高齢になっても尊厳ある暮らしを守るための福祉施策としてスタートしたはずだった。要支援1から介護5までの7区分で介護サービスを受ける量を設定するという制度自体に問題をかかえながらも、在宅での生活支援や通所介護、施設での生活など一人ひとりに合った生活スタイルをめざす施策や取り組みを介護保険制度が何とか支えてきた。その制度が崩壊の危機に瀕している。

介護保険制度の解体攻撃

 発足当初は218万人の介護認定者が今では600万人を超えた。4兆円規模の介護費用は現在約10兆円を超えている。「超高齢化社会」を迎える2025年には倍増すると言われ、現行のままでは財政的に破たんすると考えられる。なぜなら、介護にかかる財源の半分は市民の保険料、半分は国と自治体からの税投入で賄っているが、倍増となれば保険料は1万円代となり、市民の負担能力をはるかに超えてしまうからだ。

 そこで財務省が考えたのが、介護保険サービスを受ける対象者を介護3以上と限定し、2以下は「軽度者」と勝手に規定することで介護保険の対象外として自治体に丸投げする制度設計である。

 何が狙いか。2015年2月の介護保険事業状況報告から推計すれば、介護3以上の認定者は全体の3分の1であり、それ以外の3分の2を保険制度のサービス提供から排除するためである。そのことによる費用削減を約4割と試算する。まさに保険料あって介護なし≠ニいう国家的詐欺だ。制度そのものの解体である。

介護事業所の倒産続出

 制度解体攻撃は、特に2015年の介護保険制度改定で大きく踏み出した。特別養護老人ホームへの入所要件を介護3以上と狭めた。それまで一律1割負担だった利用料について、単身で年金280万円以上を対象に2割負担を導入した。

 同時に、事業所に支払われる介護報酬を大幅カットしたため、介護事業所の倒産が過去最高となる事態をもたらした。事業所の倒産は利用者の行き場を奪い、従事者の仕事を奪う二重三重の悲劇だ。政府はこうした制度解体を利用者も従事者も顧みることなく強行しようとしている。

 要支援の認定者は介護保険のサービスから排除し2017年以降は自治体に丸投げされる。介護認定者のうち約3割が該当する。その結果、これまで通りの訪問介護・生活支援を受けられる人は大阪市の場合で十数%になるというアンケート結果が出ている。

 次は2018年の介護保険改定である。まず、介護1、2の生活支援の廃止、福祉用具全額自己負担が検討された。さすがに全国からの反対運動が強く、とりあえずは延期を余儀なくされた。

利用料3割負担の狙い

 しかし、生活支援の介護報酬は引き下げることが準備されている。また、いわゆる「現役並所得」と勝手に決めつけた数字、単身で年金344万円以上(夫婦の場合463万円以上)は利用料3割負担の導入が検討されている。該当する人は約3%と試算され、抵抗が少ないところから突破しようするものだ。だが、いったん3割負担を認めれば、すそ野が広げられ、すべての利用者に適用していく狙いであることは明らかだ。

 尊厳ある暮らしを守るため、今こそ、「軍事費を削って福祉に回せ、財源は富裕層への課税で確保しろ」の声を地域のすみずみから上げる時だ。

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