2017年02月10日 1464号

【非国民がやってきた!(250)土人の時代(1)】

 日本はヘイトに満ち溢れています。

 愛国を叫び、日本の素晴らしさを言い募るだけでは飽き足らず、世界が日本を誉めていると自分で誉めそやしています。

 優れた日本と「劣った」外国を秤にかけ、居丈高になり、鼻高々と尊大にふるまうことの愚かさに気づこうとしません。

 ここ数年、在日朝鮮人や中国人に対する異様なヘイト・スピーチが取りざたされました。新大久保、鶴橋、川崎など各地で侮蔑、排除、差別、暴力の煽動が続きました。

 2016年5月にヘイト・スピーチ解消法が制定されて、少しは歯止めになりましたが、ヘイトはなくなりません。ヘイト・スピーチ解消法はヘイト・スピーチに否定的評価を与え、その防止を願う立場を表明していますが、ヘイト・スピーチを犯罪とはしていません。

 部落地名総鑑出版事件(インターネット掲載問題)も部落差別の一つであり、「表現」行為による差別と差別の助長です。

 2014年8月の札幌市議会議員による「アイヌ民族はいない」発言は、他者の存在そのものを否定する暴言でした。

 2016年7月の相模原やまゆり園障害者殺傷事件は事件の詳細が不明のままですが、伝えられるところからすれば、明らかに優生思想に基づくヘイト・クライムです。

 さらに用心するべきことは、やまゆり園事件をきっかけに政治的にも社会的にも優生思想が蔓延したことです。生きるに値する命と生きるに値しない命を格付けし、序列化する思想がヘイトを激化させます。政府は措置入院の見直しを唱えて、差別を助長しています。

 2016年10月、沖縄・高江のヘリパッド工事強制のさなかに起きた「土人」発言はヘイトの一面を鮮明に見せてくれました。大阪府警の若い警官が、実に安直に、平然とヘイト発言をしたことに驚かされましたが、松井一郎大阪市長や鶴保庸介沖縄担当大臣が懸命になってヘイトを擁護しました。

 さらに驚いたのは安倍内閣が「土人発言は差別ではない」とわざわざ閣議決定したのです。これによってヘイトは自由放任、野放しになりました。ヘイト・スピーチ解消法の制定などどこ吹く風です。内閣が土人発言を擁護してしまったのですから、ヘイトは当局のお墨付きになってしまいました。

 もともと安倍晋三首相とヘイトの拠点の一つであるネット右翼勢力との緊密な関係が知られています。首相になって以後、公の場ではヘイトを非難する発言をせざるを得なかったのに、土人発言擁護によって馬脚を現しました。

 2017年1月の東京MXテレビ「ニュース女子」の沖縄差別番組はその延長に登場しました。沖縄差別と在日朝鮮人差別が複合して、あからさまな憎悪と侮蔑をまき散らす番組が公共の電波を使って放映されました。

 政府もマスメディアもネット右翼もこれほど執拗にヘイトに励んだ時代があったでしょうか。ヘイトのターゲットは、在日朝鮮人、中国人、来日外国人、アイヌ民族、琉球民族、被差別部落出身者、障害者に及んでいます。在日朝鮮人の人権擁護を唱える日本人にも「非国民」と罵声が浴びせられ、激しい攻撃が加えられています。

 ヘイトに覆われた日本列島がマイノリティの存在を脅かし、尊厳を否定し、社会から排除しようとしています。その先に実現するのは、アベシンゾー色に染まったロボット人間の物言わぬ恐怖社会ではないでしょうか。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS