2017年02月17日 1465号

【MDS集会基調講演要旨 排外主義を全世界から追放 安倍の戦争改憲路線をストップ】

 「軍拡・生活破壊の安倍政権を打倒しよう」とMDS(民主主義的社会主義運動)集会が2月5日、東京と大阪で開催された(関連記事4・5面)。排外主義政策を次々と打ち出すトランプ米大統領、改憲・軍拡に突き進む安倍政権とどう闘うのか。基調講演(東京―佐藤和義委員長、大阪―山川義保副委員長)の概要を掲載する。

排外主義「支持」の背景

 トランプは1月20日の就任演説で「再び米国を偉大な国に、米国第一」と述べ、大統領令を連発。排外主義と規制緩和の推進を明確にした。

 1月27日の大統領令では、シリアなど7か国からの入国一時禁止を命じた。そして「米国製品を買い、米国人を雇用する」ことを掲げた。トランプを支持した貧しい白人労働者層にとって「不法移民」は職を奪う敵であり、輸入製品は国内製造業をつぶす。だから移民阻止、不法移民送還、保護貿易を推進しようと言うのだ。

 この排外主義は、トランプだけでなく欧州でもはびこっている。欧州の排外主義者たちも移民排斥を高く掲げ、既存政治を批判し支持を集めている。フランス国民戦線、オーストリア自由党、イギリス独立党。排外主義者たちは当然のことながらトランプ大統領就任を歓迎した。

 なぜこのような基本的人権無視の反民主主義者たちが一定の支持を集めるのか。

 その背景には、グローバル資本主義による極端な格差拡大がある。国際NGOオクスファムによれば、マイクロソフトのビル・ゲイツやZARAの創業者など8人の資産の合計は4260億ドル(約48兆7千億円)。その資産は、世界の下位50%の貧しい人びと36億人と等しいことが明らかとなった【図表1】。上位1%の金持ちは1988〜2011年までの間に182倍所得を増やしたが、貧困層10%は毎年3ドル未満しか増加しなかった(OXFAM AN ECONOMY FOR THE 99%)。



 このような下で排外主義者たちは既成勢力を否定し、現状を変革するという。欧州、米国の市民は既存政治に強い怒りを感じ、「変革」を期待して排外主義者を支持した。しかしトランプがしようとしていることをみれば、排外主義がグローバル資本主義擁護であることが明確になる。

グローバル資本の思想

 1月26日までにトランプが出した大統領令を見よう【図表2】。オバマ政権の下で保留されていた石油パイプラインの建設が進められる。地球温暖化対策は撤回、縮小される。リーマンショック後導入された金融規制も緩和される。ミサイル防衛網、IS対策など軍事費増を目指している。法人税を現行の35%から15%に引き下げ、所得税の最高税率を39・6%から33%に下げる。



 環境保護を捨て、法人税を減税し、規制を緩和する。まさにグローバル資本が追い求めているものだ。この政策を実行する政権人事も、財務長官や経済政策担当補佐官などに金融資本家を充て、国務長官には石油メジャーの最高経営責任者が就くなど、ウォール街、グローバル資本の中心人物が政権中枢に座った。

 排外主義とグローバル資本主義との関係はどうか。

 排外主義の基本的人権否定は、グローバル資本主義の思想そのものである。グローバル資本は移民労働力を安く使いぼろもうけをしてきた。排外主義は移民、イスラム教徒を一段低い労働力としてこき使うために必要だった。基本的人権をすべての人間に平等に認める民主主義では差別的待遇はできない。移民への差別、排外主義はグローバル資本主義の利潤の源泉だ。

 排外主義は格差拡大、貧困の原因をグローバル資本主義の被害者である移民、難民に求める。移民、難民の基本的人権を否定する排外主義はすべての市民の基本的人権を否定する突破口だ。危機に立つグローバル資本主義は自らの支配を続けるために世界各地で排外主義を強めたのである。

 しかし、トランプ政権の政策が実行されれば、すぐにグローバル資本のためのものであることがわかる。例えば、トランプは、空調機器大手キャリアのメキシコへの工場移転計画見直しで1100人の雇用が守られると述べた。しかし実際に守られるのは730人ほどで残りは解雇される。キャリアの社員が所属する全米鉄鋼労働組合支部のチャック・ジョーンズ組合長は「大喜びした翌日に解雇を知った労働者がいる。正直になれ、労働者をだしにするな」(1/30朝日)とトランプへの怒りを表明した。

 トランプの排外主義政策は全米、全世界の批判に追い込まれるであろう。全世界から排外主義を追放しなければならない。

安倍の戦争政策

 トランプ政権成立という情勢で安倍は何をしようとしているのか。

 それは2017年度予算案と安倍の施政方針演説に示されている。施政方針演説では、沖縄新基地建設、改憲への決意を示し、予算案では、軍事費を5年連続で増やし続け5・12兆円【図表3・4】とし、社会保障費を1400億円削減した。





 安倍は、トランプの米軍駐留費負担増要求をチャンスととらえて、「我が国としても防衛力を強化し、自らが果たしうる役割の拡大を図っていく」(1/26朝日)と軍事力増強を表明した。

 内戦状態の南スーダンへの武器禁輸制裁案に日本は棄権し、国連安全保障理事会で廃案に追い込んだ。安倍政権は南スーダン政府との関係維持のために武器禁輸をつぶしたのである。米国連大使の日本非難に対し、岡村善文・国連次席大使は「日本は南スーダンに自衛隊部隊を送って汗をかいているが、米国の関与は口先だけだ」と激しく反論した(12/28朝日)。南スーダン自衛隊派遣はまさに日本の独自の利害のために行われている。日本のグローバル資本の利益を守るために全世界に自衛隊を派遣するという立場を明確に示した。

 強行される沖縄での新基地建設。それとともに、沖縄で墜落したオスプレイが日本全国を飛び回ろうとしている。陸上自衛隊木更津駐屯地が米軍普天間基地所属24機、自衛隊に今後導入される17機のオスプレイの定期整備拠点になる。3月には陸自と米海兵隊のオスプレイ共同訓練が群馬、新潟で行われる。

 安倍政権の方針は軍拡、沖縄基地建設、南スーダン派兵、オスプレイ配備の戦争路線であり、共謀罪を通じて戦争に反対し、改憲を阻止しようとする運動を弾圧するものである。社会保障切り捨て、過労死水準の残業、残業代ゼロ、解雇自由、原発推進は、市民労働者の生活を悪化させ命を脅かし、グローバル資本をさらに儲けさせる。1%と99%の格差をいっそう拡大させる。

真実を暴き変革へ

 毎日新聞世論調査(1/21〜1/22)によれば、安倍内閣支持率は55%と前回より4ポイントアップした。なぜ高いままなのか。

 第一に、権力によるメディア支配だ。NHK、朝日新聞、TBSすべて安倍政権による人事、恫喝により政権批判を一切しなくなっている。沖縄県民の意思を全く無視し強権的に基地建設する安倍を少しでも批判しただろうか。アベノミクスが失敗したことを明確に報道しただろうか。メディア支配で安倍政権の失敗、強権性を市民に見えにくくさせている。

 第二に、市民が変革の展望に確信を持てない状況にある。民進党、連合により野党共闘にブレーキがかけられている。

 第三に、労働者市民が生活、労働に疲れ、安倍政権の政策批判の余裕を喪失していることだ。安倍政権は99%の人びとを政治から遠ざけた。

 第四に、中国・朝鮮・韓国などへの敵意と嫌悪をあおり、日々積み重なる不満を排外主義に取り込んでいることだ。

 だが、支持率が高いと言っても強固な支持ではなく他にないからだ。昨年の参院選時の世論調査でも安倍政権を支持する理由は「ほかに適当な人がいない」であった。変革への明確な展望が安倍政権支持を掘り崩す力となる。

 では安倍政権とどう闘うか。

 安倍政権の政策を具体的に暴露すること、その徹底である。メディアを支配されていても、メール、フェイスブック、ブログによる宣伝ができる。街頭での署名、チラシ撒きの過程で出会った人との対話を通じて変革できる。さまざまな選挙を通じて直接市民に働きかけることができる。その際わたしたちの強みは真実を語っていることだ。生活の真実、それを直視する機会を作り出し、働きかければ必ず支持される。

 また、地域からの運動建設を通じて強固な安倍打倒共闘運動を作り出すことだ。連合が何を言おうが、民進党内改憲支持派がどうしようが、揺るぎのない共闘を作り出すことが展望となる。

 闘いの課題は明確だ。

 オスプレイ配備・訓練阻止、沖縄新基地建設反対、南スーダン自衛隊撤退、共謀罪阻止、戦争法廃止、改憲阻止を掲げ、闘いぬかなければならない。
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