2017年02月17日 1465号

【ミリタリー 「島嶼(しょ)防衛作戦」の正体 犠牲強要の沖縄戦再来許すな】

 1月24日付け毎日新聞は「政府は2020年代半ばまでをカバーする現行の『防衛計画の大綱』(防衛大綱)を見直す検討に入った」と報じた。

 防衛大綱とは自衛隊の軍事戦略を明示する文書である。2014年策定の現大綱は、ミサイル攻撃を軸にした離島(沖縄・南西諸島を想定)への攻撃などに「切れ目なく」対応する「統合起動防衛力」を柱にし、「島嶼(しょ)防衛作戦」を色濃く打ち出した。大綱と同時に、その武器導入・調達計画である「中期防衛力整備計画」(中期防)が5年計画(14〜18年)で策定されている。

 すでに、次期中期防(19〜23年)の策定が予定されており、これに合わせた前倒しが今回の「大綱見直し」だ。要するに、現大綱で明示した「島嶼防衛作戦」の本格化と強化を一気に進めようという宣言である。

 さて、「島嶼防衛作戦」とはどのようなものか。だれの攻撃から、どの島嶼を防衛するものなのか。

 政府、防衛省やメディアの宣伝で一般に流布されているイメージは、朝鮮民主主義人民共和国によるミサイル攻撃や中国との尖閣諸島での軍事衝突だが、実際はそんな局地的なものではない。アジア太平洋戦争でのサイパン、テニアン、グアム、琉球列島等をめぐる旧日本軍の対米戦争をイメージする方が近い。

 想定されているのは、中国海軍の艦艇や大型商船を西太平洋に出させないための自衛隊主体の東中国海封鎖作戦(海峡、水道封鎖)であり、これを突破しようとする中国との海洋限定戦争である。「海洋限定」とはいえ、制空、制海をめぐって陸海空の戦力を総動員する大規模な戦争である。双方がミサイル攻撃を主軸に展開する激しい戦闘となることは間違いない。

 現在、先島(さきしま)諸島―南西諸島に新たに配備され、増強される予定の自衛隊部隊は、当面の規模でも約1万人の大部隊だ。与那国島約200人(陸自の沿岸警備隊、空自の移動警戒隊)、石垣島約600人(警備部隊、ミサイル部隊等)、宮古島約800人(警備部隊、ミサイル部隊等)、沖縄本島約2000人(増強の陸海空部隊)、奄美大島約600人(警備部隊、地対空、地対艦ミサイル部隊等)、西部方面普通科連隊の旅団への昇格等部隊等約4000人(旅団にプラスされるオスプレイ部隊800人と水陸両用車部隊)等々である。すでに沖縄駐留の約8500人(16年、空自の1210人などが増加)の陸海空自衛隊が加わる(小西誠著『オキナワ島嶼戦争』)。

 だが、これらの部隊は、あくまで事前配備部隊であり、今後大幅に増強されることは間違いない。例えば、与那国島や宮古島に設置される貯蔵庫(弾薬庫)の巨大な規模は、現状の部隊配備では済まないことを示す証拠の一つとなっている。また、沖縄本島で強引に進められる辺野古新基地など米軍基地強化も「共同使用」を通じてこの「作戦」の重要な環となっていることは明確だ。そして、最終的には約5万人以上を動員する戦争が想定されている。これが「島嶼防衛作戦」の実像である。

 政府、防衛省は、この実際の計画を住民に一切知らせることなく、配備と常駐による「経済活性化」などで各島の首長らを取り込み、「事前配備」の実体づくりを急いでいる。

 だが、この計画は西太平洋における日中の覇権争奪戦争に他ならない。住民を徹底的に犠牲にした沖縄戦の再来となることを広く知らせ反対しなければならない。辺野古、高江の新基地建設阻止の闘いとむすぶ極めて重要な課題だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS