2017年02月17日 1465号

【東京MX/沖縄ヘイト番組の背景/制作者はやはり安倍応援団/政権の先兵としての憎悪煽動】

 東京MXテレビの番組「ニュース女子」が沖縄県高江の米軍ヘリパッド建設に反対する市民を虚偽報道で中傷したことが大きな問題になっている。番組は公共の電波を使った沖縄ヘイトの流布であり、国策に従わぬ者を見せしめ的に叩くものだ。この差別デマ番組を制作した連中の素性を探ると、やはり安倍応援団が浮かび上がってきた。

取材もせずデマ流す

 問題の放送は「沖縄・高江ヘリパッド問題の“いま”」と題した1月2日の放送分。軍事ジャーナリストの井上和彦が「マスコミが報道しない真実」を緊急調査するという触れ込みだったが、その内容は事実の歪曲と偏見に満ちたひどいものだった。

 いわく「運動家の人たちが襲撃してくる」「テロリストみたい」「過激派が救急車も止めた」「反対派は日当をもらっている。組織に雇われている」「韓国人はいるわ、中国人はいるわ、何でこんなやつらが反対運動やっているんだと地元の人は怒り心頭だ」「沖縄の大多数の人は米軍基地に反対ではない」等々。

 こうした主張を井上は運動側への取材もせずにたれ流した。救急車の話は現地の消防本部が否定しているし、多くの人びとが自腹を切って高江や辺野古に駆けつけていることは、本紙読者の皆さんには説明するまでもない。「警察も手出しできない」だなんてデタラメにも程がある。

 基地建設に反対する市民を「逮捕されても生活に影響のないシルバー部隊」「基地の外の反対派」(「キチガイ」と言いたいのだ)と表現するテロップや、「無法地帯に年間3千億円の沖縄振興費が流れている」といったコメンテーターの発言もひどい。番組の構成自体が反基地運動を貶(おとし)める演出に徹している。

 「反対運動を煽動する黒幕」と名指しされた辛淑玉(シンスゴ)さん(「のりこえねっと」共同代表)は、「私もウチナーンチュも『こいつらは国家の敵、たたいてもいい』と、つるされた」と憤る(1/27)。「国家権力の素顔を見抜き、闘いを挑んでくる『生意気な非国民ども』に対しては、ただつぶすだけでは飽き足らず、嘲笑して力の差を見せつけた上で、屈辱感を味わわせようとする」というわけだ。

 彼女が指摘するように、今回の沖縄ヘイト特集はたんなるネトウヨ向けの企画ではない。国家に従わない者を社会から抹殺するために確信犯的につくられた「政権の先兵としての憎悪扇動」なのだ。

「沖縄圧殺」の意図

 具体的にみていこう。「ニュース女子」を制作しているのは化粧品・健康食品大手DHCの子会社DHCシアターと、関西の番組制作会社ボーイズ。DHCがMXテレビの放送枠を買い取る形で放送されている。ちなみに、スポンサーのDHCはMX最大の取引先である。

 DHCの吉田嘉明会長は在日コリアンへの憎悪をあらわにするレイシスト。同社の公式サイトに「似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう」といった会長メッセージを載せているほどだ。DHCシアターは元々CS放送局だったが、この吉田が実権を握って以降、極右番組製造会社に変質した。

 極右の論客が毎回登場する「ニュース女子」は現在、地上波ではMXのほかに8つの地方局で放送されている。そのうち7局が今年1月からの放送開始だ。カネで電波を買い、沖縄デマを拡散しようという意図がうかがえる。

 もうひとつの制作会社ボーイズは、橋下徹を輩出した関西の討論番組『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ系)の制作も担当している。安倍晋三首相がいたくお気に入りの番組で、首相に就任してからも国会審議をさぼって出演したことがある。

 「タテマエなし。本音をぶっちゃけ」の名の下に、差別的で排外的な言説をまき散らし、平和運動や反原発運動をあざ笑う−−「ニュース女子」の手法は明らかに『そこまで〜』を踏襲している。出演者をみても、司会の長谷川幸洋(東京新聞論説副主幹。安倍政権の代弁者として有名)をはじめ、多くが『そこまで〜』の常連メンバーだ。

 「アベさま」に逆らう沖縄をつぶすため、公共の電波を使った差別煽動が本格的に始まった−−これが今回の問題の本質だ。事実、反基地運動をデマで攻撃するテレビ番組は「ニュース女子」だけではない。情報番組の司会者や出演者が虚偽情報にもとづく発言を平気で行っている。大阪のテレビ局が制作している番組が特にひどい。

 こうした沖縄ヘイトの空気が大阪府警機動隊員による沖縄差別発言、すなわち「土人発言」につながった。差別思想が流布される裏には政権による「沖縄圧殺」の意図が存在するのである。

デマ暴く「映像'17」

 ネット空間に広がる「反基地運動叩き」の風説を検証したドキュメンタリー番組が先日放送された(1/29)。大阪の毎日放送制作の『映像'17 沖縄 さまよう木霊〜基地反対運動の素顔〜』である。

 ネットで「沖縄極左」「成田闘争で暗躍」と攻撃される人物(51)がいる。だが、作業療法士として働く彼が運動に参加したのは4年前。「高齢者の頭の上で戦闘機を飛ばしてほしくない」との思いからだった。「反対派が救急車を襲撃」というデマについても、地元の消防本部や最初に情報を発信した本人への取材によって、事実無根であることを明らかにしている。

 大変優れた調査報道が関西ローカルの深夜枠でしか放送されないのは本当に惜しい。こういう番組こそ全国放送されるべきなのだ。  (M)



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