2017年02月24日 1466号

【沖縄辺野古に巨大ブロック投入 「まだ埋め立てではない 決してあきらめない」 山城さん不当長期勾留許すな】

既成事実化へ世論誘導

 翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事が3度目の訪米要請から戻ってきた翌2月6日、沖縄防衛局は名護市辺野古の新基地建設工事を再開した。辺野古崎から東側の広大な大浦湾にかけて、11〜14トンの大型コンクリート製ブロックを積載した台船、大型クレーン船2隻、海底ボーリング調査のために新しく導入された大型特殊船「ポセイドン1」が巨大な姿を見せた。この日、台船に積まれたブロックをクレーン船に移し替える作業が行われた。

 在京の朝日、毎日、読売、東京、産経の7付日朝刊は1面(日経は2面)で、「辺野古本体工事に着手」などと報じ、民放やNHKも大々的に「埋め立て着工」と伝えた。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で「昨年3月の沖縄県との和解、暮れの最高裁判決にのっとり沖縄の基地負担軽減のために粛々と作業を進めていく」と恥ずかしげもなく公言した。しかし、7日に準備作業としてコンクリートブロック4個が投入されたものの、まだ土砂埋め立てではない。メディアを使って既成事実化を演出しているにすぎない。

 高江ヘリパッド建設でもずさんな工事のために斜面が崩れ赤土が流出して工事をやり直しているように、すでに終わっていた辺野古のボーリング調査も不十分だった可能性が高い。今回投入された「ポセイドン1」は、海面下3千メートルまで海底掘削調査が可能な特殊船だ。残り1か所だけだったはずのボーリング調査地点を、さらに十数か所掘削調査するという。

ゲート前に300人が座り込む

 キャンプ・シュワブゲート前では、6日早朝から連日300人近くの市民が駆けつけ、作業員や工事車両を入構させない座り込み行動が続けられている。機動隊に何度ごぼう抜きされても座り込みに戻り、6日は車両が3時間以上も県道で足止めになった。「まだ埋め立てではない」「決してあきらめない」「本体工事着工と言って、県民には諦めさせ、本土にはもう辺野古は終わったと思わせ、米国にはやってますよという安倍の土産≠セ」と怒りの声が上がる。

 安倍政権の法律無視、詐欺的手法は許せない。3月末の岩礁破砕許可再申請も、名護漁業協同組合による一部漁業権の放棄により知事の再許可は不要と水産庁に言わせた。1月13日沖縄防衛局と名護漁協が6億円で臨時制限区域の漁業権を放棄する漁業補償契約を交わしたことで、県への許可再申請は不要というのだ。だが、前仲井真知事当時、2013年の埋め立て区域の漁業権放棄の後も沖縄防衛局は県に岩礁破砕許可を申請している。完全な二重基準だ。

連日の山城さん激励と抗議

 辺野古・高江のリーダー山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)の不当勾留は2月8日で115日を数えた。市民が傷を負わないよう有刺鉄線1本を切断したなどの微罪で、家族の面会も認めないこれほど長期の独居房での不当勾留など法律上も人道上もあってはならないものだ。

 この日、照屋寛徳衆院議員が那覇拘置所で接見した。悪性リンパ腫の闘病を続ける山城さんだが、この日は表情が明るかったという。7日の沖縄タイムス社説に掲載された「辺野古から博治さんへ」をすでに房の中で読んでおり、記事の内容を書き写していた。社説の末尾は「博治さん。拘置所の狭い空間の中では一人ですが、外の世界では決して一人ではありません。県内や国内だけでなく海外からも、多くの励ましの声が届いていることをお伝えしたいと思います」。照屋さんがその個所を読み上げると山城さんは感極まって涙した。前日一人でこの社説を読んだときも、房内の布団に突っ伏して号泣した―照屋さんは自身のブログでそう紹介している。

 山城さんを激励する行動は、月曜から金曜まで連日那覇地裁前で「基地の県内移設に反対する県民会議」や、平和運動センター、平和市民連絡会、うるま市島ぐるみ会議などが行っている。激励の声は房内にも届くという。

 2月8日、辺野古ゲート前行動からバスで戻った平和市民連絡会は40人で激励と那覇地裁抗議行動。参加者一人ひとりが山城さんへの思いを伝え、不当勾留を糾弾する。「仲間を返せ」「博治さんを返せ」「全司法(労働組合)の組合員の皆さん、裁判所の中からも民主主義のために闘い続けてください」。40分間、スピーチやシュプレヒコールが楚辺(そべ)の裁判所周辺に響く。

 山城さんが高江の雑木林で有刺鉄線を切断したのは、市民を守るためだけではなく、この国を棘(いばら)で締め付けるような国家権力の暴虐を断ち切るためだったと思えてならない。   (N)





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