2017年02月24日 1466号

【非国民がやってきた!(251)土人の時代(2)】

 日本はヘイトに満ち溢れています。

 世界もヘイトに苛まれています。

 ヘイトを生み出したいわば発祥の地でもあり、ヘイト克服の先頭に立ってきたはずの西欧世界は、難民問題とテロの危機に直面して揺れ動いています。

 ギリシアの右翼政党の台頭は地域ニュース扱いでしたが、ベルギーの分断や、スペインの経済危機を経て、ヘイトは瞬く間に欧州を席巻しました。フランスの「シャルリ・エブド」と国民戦線の台頭はヘイトの開き直りの典型例です。イギリスはスコットランド独立問題住民投票とEU離脱をめぐる国民投票を通じて偏狭なナショナリズムが蔓延しました。ドイツではペギーダと呼ばれる排外主義運動が路上を制し、メルケル政権は支持率低下に直面しています。ここには幾重もの植民地主義の問題が伏在しています。

 欧州を混迷に追い込んだ要因の一つは中東からの難民ですが、アフガニスタン、イラン、イラク、シリアをはじめこの地域の戦乱と抑圧と崩壊の根は言うまでもなく植民地支配の歴史にあります。中東世界の混迷を解決しようとする国際社会の努力はほとんど常に妨げられ、失敗に帰してきました。分断と貧困と資源紛争と宗教紛争がアフリカを撹乱し、人々をどん底に貶めていることは言うまでもありません。

 数え上げていけばきりがないくらい、この惑星の各地に紛争の種がまき散らされ、それらが芽を出しているのが現状です。

 現代世界における人種主義、人種差別、排外主義の主要な要因が植民地主義の歴史であることは、2001年のダーバン人種差別反対世界会議でも確認されました。ダーバン宣言は次のように確認しました。

 「14.植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する。この制度と慣行の影響と存続が、今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾である。」

 植民地主義だけが根源というわけではなく、貧困、低開発、周縁化、社会からの排除、経済不均衡などさまざまな要因が相互に重なり合い、影響し合っていますが、植民地主義を度外視して現実を説明することはできません。

 同様に、植民地主義と奴隷取引、奴隷制の密接な関係も無視することはできません。

 「13.大西洋越え奴隷取引などの奴隷制度と奴隷取引は、その耐え難い野蛮のゆえにだけではなく、その大きさ、組織された性質、とりわけ被害者の本質の否定ゆえに、人類史のすさまじい悲劇であった。奴隷制と奴隷取引は人道に対する罪であり、とりわけ大西洋越え奴隷取引はつねに人道に対する罪であったし、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の主要な源泉である。アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は、これらの行為の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けている。」

 植民地主義は植民者と被植民者を、「文明人」と「原住民」を、市民と奴隷を生み出します。<文明と野蛮>という分断が世界を覆います。

<参考文献>

徐勝・前田朗編『<文明と野蛮>を超えて』(かもがわ出版、2011年)
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