2017年03月03日 1467号

【みるよむ(430) 2017年2月18日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラク市民は 賃金引き下げに怒る】

 イラクでは、公的部門の労働者の賃下げが決定された。労働者の生活は一層圧迫を受ける。しかも、政府幹部の汚職が財政赤字の原因だという。2016年11月、サナテレビはこの賃金引き下げに対する市民の怒りを取材した。

 公的部門労働者の賃金を3・7%も引き下げると決定したのはイラク議会だ。最初にインタビューに登場する弁護士は「労働者の賃下げ率は高いのに、会社の社長クラスは賃下げがない」と指摘する。これでは、高い賃金を保障される経営者と低賃金の労働者の格差はますます大きくなる。「労働者に不公平な扱いや抑圧が行われた」と批判する。

 イラクの国家財政を危機に陥れたのは、汚職によって国家財政を食い物にしてきた政治家たちだ。ある市民活動家は「問題なのは社会的正義がないことだ。国会議員は1か月に2000万ディナール(約200万円)を受け取っているのに私の賃金は50万ディナール(約5万円)。これでは家賃を払うのにも不十分だ」と憤る。賃金の格差は実に40倍にもなっている。政治家の汚職が招いた財政危機を低賃金の労働者の賃金をさらに引き下げて乗り切ろうというのである。

 サナテレビのインタビュアーが語るように、国家財政の危機の中でどうしていくべきかは、市民の中でも様々な意見がある。

 番組の最後に登場する退職者は、国が必要なら年金の削減に応じるとさえ言う。イラク社会の再建のためには自分の収入が減ってもかまわないとする市民の気持ちを踏みにじり、不当な賃金切り下げを進めるイラク政府の許しがたい仕打ちに怒りがわく。

立ち上がる労働者

 現在、イラクの市民・労働者は不当な賃下げに抗議し、立ち上がっている。

 インタビューが行われた時期からそれほど日がたっていない1月16日、南部サマワ(イラク占領の時に自衛隊が駐留した)の清掃労働者が50%もの賃金カットに抗議し、市当局に対して抗議デモを行った。労働者たちは市当局と団体交渉を行い、「要求を達成するまでデモをやめない」と宣言している。

 サナテレビは、こうした労働者の闘いと結んで、アバディ政権に反対して立ち上がろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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