2017年03月03日 1467号

【未来への責任(219)補助金停止はレイシズム】

 高校無償化からの朝鮮学校除外は、憲法違反はもちろんのこと、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約などの国際人権法違反である。

 国連の社会権規約委員会は1997年に「国際法に従って適当な場合に制裁を課す必要性について疑問に付すものではない。しかし、人権に関する(国連)憲章の規定は、かかる場合においてもなお完全に適用があると考えられなければならない」とし、朝鮮への経済制裁と民族教育権を「天秤」にかけることを禁じる見解を示している。

 昨年3月、この国連見解に反し文部科学省は朝鮮学校がある28都道府県知事宛てに通知を送りつけた。「北朝鮮と密接な関係を有する朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているもの」だから各自治体が独自に交付する補助金でも「朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な検討」を行うよう指示した。

 にもかかわらず、これまで多くの自治体で地域住民として生きる在日朝鮮人の民族教育に対し、地方自治の精神に則り補助金を支給してきた。この通知によって政府は高校無償化からの排除だけでなく自治体の補助金をもカットしようとしたが、これに対して5月には研究者有志の抗議声明、7月には日弁連から補助金停止に反対する会長声明が出された。

 この通知に遡(さかのぼ)る2014年9月、国連人種差別撤廃委員会は「締約国がその見解を修正し、適切な方法により、朝鮮学校が『高校授業料就学支援金』制度の恩恵を受けられるようにすること、朝鮮学校への補助金支給を再開もしくは維持するよう、締約国が地方政府に勧めることを奨励する」との勧告を出し、高校無償化からの排除、地方自治体の補助金停止はまさに「人種差別」にほかならないと断じた。日本政府は、本来このことこそ地方公共団体に通知すべきであるのに真逆の通知を出したのである。

 このような状況下、1月26日大阪地裁は、大阪の朝鮮学校に対する大阪府・市による補助金の不支給決定の取り消しを求めた裁判で、憲法や国際人権法などは補助金の交付を受ける権利を基礎付けるものではないと、請求を棄却した。停止された補助金は学校経費の約1割を占め、校舎の修理、教材購入費に影響し、児童・生徒にしわ寄せが出ているという。自治体の補助金停止は、在特会らのヘイトスピーチと同様にますますレイシズム(人種・民族差別)・排外主義を助長する。

 小池百合子東京都知事は、昨年9月就任早々朝鮮学校への補助金停止の継続を表明し、前知事の韓国学校への土地提供計画を白紙撤回するなど、レイシズムを煽る自治体の先頭に立っている。三重県四日市市も新年度の四日市朝鮮初中級学校への補助金停止を決定したと報道された。

 一方、全国各地の朝鮮学校の高校無償化裁判も山場を迎え、大阪裁判は7月に判決、東京裁判も4月に結審する。政府、自治体、司法に至るまでレイシズムを助長・推進している今、まさに植民地主義の克服が問われている。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)

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