2017年03月10日 1468号

【講演会「住宅問題と裁判」開く 幸福追求権の実現めざして】

 区域外避難者の住宅無償提供打ち切りがあと1か月と迫った2月25日、都内で避難者が最も多く暮らす東雲(しののめ)住宅に近い江東区豊洲で、住宅裁判に向けた講演・説明会が開かれた。

 主催は1月6日に発足した「原発避難者住宅裁判を準備する会」。講演した酒田芳人弁護士は、考えられる訴訟の形として「都営住宅などの一時使用許可(継続)申請書を提出し、不許可処分となればその取り消しを求めて訴え、併せて、許可処分を出すよう命じる義務付け訴訟を起こすことを検討中だ」と述べた。同時に、最高裁判例では行政の裁量権をめぐって「判断が重要な事実の基礎を欠くか、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って裁量権の逸脱または濫用として違法となる」とあり、大きなハードルを超えなければならない、と指摘。「避難者の住居を一方的に奪うことは社会通念に照らしても許されることではない。東電・国に責任があるのに、(原発事故に対応した)法も救済制度もちゃんと作らず、『特別に貸してあげている』というのはおかしい。本来、避難すべき状況だったわけで、避難の権利がある。このような社会の後押しが裁判には必要」と強調した。

憲法・国際法を根拠に

 参加した避難者・支援者からは「敗訴すると住み続ける者に不利にならないか」「一時使用許可などの制度も知らずに4月を迎えた避難者も裁判に参加できる仕組みが必要ではないか」など、率直な議論が交わされた。「なぜ4月以降も住み続けているのか、『負い目』なく生活する上で社会に訴える大義は」との問いに、大口昭彦弁護士は「打ち切りは幸福追求権・生存権・居住権を保障した憲法にも国際法にも反する行為。年間20ミリシーベルトの基準自体が生存権を無視し、チェルノブイリ法の避難の権利から見ても不当だ。裁判では、正々堂々と訴え、社会に問いかけることになる」と話した。

 会事務局からは「一人も路頭に迷わせてはならないと、一方で東京都・福島県と個別ケースの交渉を進めてきた。継続入居で落ち着いた世帯もあり、その意味で原告対象者は減ってきた。しかし、まだ行き先が決まっていない見知らぬ世帯も多く、準備会の存在を広げていきたい」と決意が明らかにされた。



誰も路頭に迷わせない 避難の協同センター

 避難の協同センターは2月21日、参院議員会館で記者会見を開き、住宅無償提供打ち切り問題で今後行政に対し求めていく要請内容を以下の通り明らかにした(要旨)。

1.区域外避難者への家賃や転居費用など経済的支援の早急な実施。

2.公営住宅などの入居要件の撤廃または大幅緩和と、住まいが決まらない避難者への開放。支援から外れる避難者が出ないよう配慮。

3.民間賃貸住宅の継続居住に関する自治体のサポート。貸主による必要以上の条件提示で継続居住を断念することがないよう指導の強化。

4.小さい子がいる世帯、母子避難などで生活上の困難にある避難者からの丁寧な聞き取り、配慮ある支援。

5.誰も路頭に迷うことのないよう配慮ある対応の約束。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS