2017年03月17日 1469号

【森友学園 理事長だけを悪者に/姑息な逃げ切りはかる安倍首相/これは「アベの国」小疑獄だ】

 学校法人「森友学園」の政界工作が暴かれつつある「安倍記念小」疑惑。さすがの安倍晋三首相も「一切関係ない」では済まされなくなってきた。注目すべきは、御用メディアの態度が「黙殺」から「森友叩き」に変わってきたことである。ネトウヨ理事長だけを悪者にすることで政権への延焼を防ぐ策動を許してはならない。

安倍夫妻は被害者か

 「日本初の神道の小学校」が売りの、そして当初は「安倍晋三記念小学校」と名づける予定だった小学校の設立を目指す森友学園。資金不足の中で開校にこぎつけるために、様々な政治家に働きかけを行っていた。その一人が自民党参院議員の鴻池祥肇(こうのいけよしただ)だ。

 鴻池事務所の陳情記録には、「上からの政治力で早く結論が得られるようにお願いしたい」といった森友側の要望が赤裸々に書き留められていた。籠池(かごいけ)泰典理事長夫妻が鴻池本人と面会し、「紙に入ったもの」を差し出して「これでお願いします」と懇願したこともあったという。

 この鴻池証言(3/8)をきっかけに、森友学園による働きかけを受けたという政治家が次々に名乗りだした。自民党の兵庫県議、大阪維新の会の大阪府議等々。議員ではないが、安倍晋三事務所に一時出入りしていたという人物から「私が近畿財務局に口利きをした」との告白もとびだした(週刊文春3月9日号)。

 これらの証言に共通するのは「安倍夫妻の関与はない」との強調である。鴻池証言が典型で、籠池理事長は「あんなん教育者にしたらいかん」とボロクソなのに、安倍首相夫妻については「安倍さんも奥さんも気の毒や。のせられた」とかばいたてる。

 籠池理事長の悪役キャラを際立たせることによって、安倍夫妻を「一方的に利用された被害者」であるかのように印象づける−。なるほどこれが安倍首相が国会答弁で連発している「イメージ操作」なのかと勘ぐりたくなる。

森友叩きに転じた報道

 もともと安倍首相は森友疑惑を軽く見ていた。御用メディアが得意の「黙殺」を駆使し、スキャンダルに発展する前に消えているはずだった。実際、メディアの報道は当初少なく、「金正男暗殺」報道の中に埋没していた。

 BuzzFeed Newsが朝日新聞の第一報(2/9)から2月22日朝刊までの全国5紙の報道を比較している。東京版・大阪版を合わせた記事本数が一番多かったのは朝日新聞で14本。毎日新聞が11本で続く。3位はぐっと少なくなり日本経済新聞の4本。産経新聞は3本。5位の読売新聞はたったの2本であった。

 この間の読売新聞は、国有地の売却額(鑑定価格より8億円以上も安い)や「安倍晋三記念小学校」名で寄付金集めが行われていたことを一切報じていない。これぞ御用新聞の鏡というべきか、極端な情報操作というほかない。

 しかし、昭恵夫人と森友学園のずぶずぶの関係や異常な教育の実態を示す映像が次々と発掘され、沈黙していたメディアも後追いで報道を始めた(最初に森友問題を取り上げ、独自映像によるスクープを連発した、テレビ東京『ゆうがたサテライト』の功績は大きい)。封じ込め策動は破たんしたのである。

 焦った安倍自民党は、野党議員が森友学園の運動会映像をもとに作成したパネルを国会質問の場に持ち込むことを拒否。審議のテレビ中継も拒んだ(2/27衆院予算委)。そして、予算案が衆院を通過した2月27日の夜、首相と内閣記者会キャップとのオフレコ懇談会が赤坂の高級中華料理店で行われた。

 そこで語られた官邸の意向が、出席した記者を通して報道各社上層部に伝わったのは間違いない。「籠池叩きはOK。ただし安倍夫妻はあくまでも被害者という線でよろしく」というように。

安倍支配の醜い象徴

 たしかに籠池理事長はゴロツキ右翼としか言いようがない人物である。排外主義丸出しの差別発言、幼児虐待を疑う「指導」、そして悪人顔にこわもての態度など、ビジュアル的にも悪役としてキャラが立っている。だが、籠池叩きで溜飲を下げた気になってはいけない。問題の主役は、安倍首相その人なのだ。

 財政面に不安があり、保護者とトラブル続きの学校法人に、役所が異例の便宜を図ったのはどうしてなのか。文科省や防衛省が顕彰し、大物政治家が後援し、ついには現職総理の夫人が新設校の名誉校長を承諾したのはなぜなのか。安倍政権が目指す教育内容を森友学園が先行実施していたからである。

 安倍政権は幼児教育の段階から「日の丸・君が代」を強制し、歴史や領土問題などで政府の立場を教え込む「愛国教育」を子どもたちに施そうとしている。そのグロテスクなさきがけが森友学園であった。同学園をめぐる一連の疑惑は、安倍の極右ヘイト思想にこの国が侵食されていることを示しているのである。

 すべてをネトウヨ理事長のせいにして逃げ切りを図る安倍政権。ごまかされてはならない。これは「瑞穂の国」ならぬ「アベの国」小学校スキャンダルなのだ。  (M)



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS