2017年03月31日 1471号

【韓国 朴槿恵大統領 罷免 「政経癒着」への市民の怒り 新自由主義政策の転換へ】

 韓国はいま、朴槿恵(パク・クネ)大統領が罷免(3/10)され、大統領選挙(5/9)へと進んでいる。この動きをつくり出したのは、数十万、数百万と過去最多の参加者数を更新し続けた市民の抗議デモだ。「政経癒着」を糾弾する声は、朴大統領とその友人・崔順実(チェ・スンシル)との癒着批判にとどまらない。資本のための新自由主義政策を強行し、憲法と民主主義を否定する朴政権に対する広範な怒りが結集したものだ。

 憲法裁判所は、朴大統領罷免理由に、崔被告(詐欺未遂、強要未遂など)の利権追及への加担・職権乱用と疑惑解明への捜査拒否など憲法遵守の意思が見られないことを挙げた。「罷免することで得られる憲法を守る利益は圧倒的に大きい」と断じた。

 職権乱用では、現代自動車グループや通信大手KTへの崔被告関連企業との取引要請、さらに、企業献金により設立されたミル財団、Kスポーツ財団を崔被告が私物化し、利権獲得を助けた。首席秘書官を通じるだけでなく、直接ロッテグループ会長に資金提供を要請した事実を挙げた。

 事件発覚以来、とどまるところのない市民の怒りは、もっと大きな「政経癒着」に向いていた。資金提供した大企業は脅迫されたわけではない。より大きな利益を政権に求めていたのだ。

核心は「規制緩和」

 「財閥ゲートの核心は規制フリーゾーン法だ」。労働者・市民団体は、サムスン電子副会長、現代グループ会長、LGグループ会長など財界リーダー6人を「贈収賄罪」で告発した(1/23)。「地域戦略産業育成のための規制フリーゾーン指定と運営に関する特別法」(規制フリーゾーン法)は、文字通り大企業の戦略事業に規制緩和特権を与えるもので、2015年10月、朴大統領が国民経済諮問会議で政策を示し、政財界あげて推進した。日本の国家戦略特区同様、企業利益最優先の特別区域をつくるものだ。

 民主労総キム・ギョンジャ副委員長は「財界リーダーたちは全経連(全国経済人連合会)を通じて、ミル財団、Kスポーツ財団に資金提供を行い、規制特例を手にした」と批判する。

 10月末に始まるキャンドル行動に先立つ9月、労働者は朴政権の成果年俸制導入との闘いを強めていた。

 成果年俸制は「労働者の業務能力と成果に応じて給与を支給する賃金体系」とされ、朴政権が掲げる「4大改革」(労働・公共・金融・教育部門)のうち労働改革の中心課題の一つ。16年1月から労働組合との合意抜きに、強引に導入してきた。「成果」主義の導入は、資本側が「成果」評価を握り、容易に賃金カットを可能とするものだ。賃金体系の改悪を狙い、政府機関での先行導入こそ「政経癒着」の一つと言える。

 9月23日に金融労働組合が2年ぶりにスト。9月27日、鉄道・地下鉄の労働組合が約22年ぶりに同時ストを開始。韓国労働組合の2大中央組織、韓国労総と民主労総が、同28、29の両日、金属労組・保健医療労組などのストをはじめ、各地で大規模な集会を開催した。これが市民のキャンドル行動へとつながったのだ。

政策の転換まで続く

 大資本と癒着し、市民に犠牲を強いる朴政権に対する怒りは、崔被告のやりたい放題、真相解明を妨害し延命を図る朴大統領の姿に大きく燃え広がった。1500もの労組・市民団体が「朴槿恵政権退陣緊急国民行動」を結成し、「ろうそく集会」を主催。10月29日第1次行動、数万人の参加者は、11月26日の第5次には150万人となり、12月3日170万人を記録。韓国憲政史上最大の規模となった。

 政治的思惑が先行し、弾劾決議をためらっていた与野党国会議員を決議に向かわせたのは、増え続ける市民の行動に他ならない。憲法裁判所も当初、親朴派裁判官が多数で罷免は困難との観測が流れていた。だが、全員一致で罷免を決定したのだ。

 広範な市民の平和的直接行動が腐敗政権を打倒した。「ろうそく革命」と呼ぶにふさわしい。革命は政権の交代とともに政策の変更を伴うものだ。「朴槿恵政権退陣緊急国民行動」は3月11日、「2017キャンドル権利宣言」を発した。

 そこには「権力を独占した少数の勢力に民主主義と人権が蹂躙(じゅうりん)された、ひどい現実に耐えられない怒り」が記されている。選挙制度の改革、直接民主主義と市民監視の強化をはじめ腐敗と特権を許した現制度の改革を求めている。民営化の中断、成果年俸制の廃止、非正規職の正規職化など経済・労働分野から公共医療の充実など社会保障、競争や序列化を排除した教育、そして、韓半島の平和共存・統一など、広範な要求が挙げられている。

 政治を私物化する腐敗政治家を民衆の手で追放することで新自由主義政策は転換できる。日本の市民・労働者にも大きな希望を与えるものだ。

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