2017年03月31日 1471号

【尊厳ある暮らしを守る集い もう黙っていられない! ケア保障する介護保険制度へ】

 “生きがいのある老後”をめざして、心身ともに疲れ果てながらも踏ん張る介護従事者たち。しかし、介護保険制度の改悪の動きは、福祉も福祉に携わる人びとも切り捨てる。NPO法人くまハウスの大久保信之さんに寄稿してもらった。

 3月12日、東京・足立区で「もう黙っていられない!尊厳ある暮らしを守る集い」を開催しました。

 介護保険制度が始まって17年。今、高齢者が増える中で、それに逆行する費用負担の増加やサービスの抑制を中心とした制度の改悪が行われようとしています。この動きを何とか止めたいと、集いを取り組みました。介護従事者、医療従事者、高齢者やその家族、一般区民など約70名の参加を得て、初めての取り組みとしては大成功し、心強く思いました。

小規模ケア軽視に怒り

 一昨年に要支援が介護保険から除外され、介護報酬が引き下げられました。昨年は要介護1、2の生活援助の切り捨て、所得により1割〜2割負担の導入、特別養護老人ホーム入所は要介護3以上にする等々、強い憤りを感じていました。

 私は小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)の事業所を運営しています。正直なところ2割負担が始まる昨年の夏ごろまでは事業運営に精いっぱいで、複雑な制度に変わっていく動きについていけず、先が見えない状況が続いていました。常勤スタッフが3名減りその補充ができず、仕事に穴があかないようにカバーすることに追われ、考える余裕もないことが大きな要因でした。小規模多機能の連絡会の取り組みに引っ張ってもらって動いている状態でした。

 気持ちが前向きに変わったのは、介護報酬引き下げが小規模デイサービスの運営に大きな痛手を与え、倒産や事業の廃止が生じていることを知る機会が増えたことです。

 私自身、16年前に「宅老所」として小規模デイサービスから始め、見学に訪れた皆さんが「アットホームですね」とその印象を語られていました。とくに認知症が重度で徘徊、暴言、暴力などの症状があっても、じっくりと関わり落ち着いていくケアができる良さに確信がありました。言い換えれば、小規模ケアは高齢者ケアの原点であると思います。にもかかわらず制度の見直しや報酬改定で小規模デイサービス事業所の削減を狙い撃ちする動きに強い怒りがわいてきたのです。

 昨秋の2度の厚労省要請に参加し、統計ばかり見てケアの実態を知ろうとしない態度により一層怒りが増しました。

切実な課題が見えた

 集いには区内10事業所から参加がありました。そして参加のお願いと同時に署名協力もお願いしていて、合計で70筆の署名を持参してくださいました。早く何とかしたい切実さを感じました。事業に取り組む過程の報告、意見交流などから共通した問題は、人手不足と低賃金の実態でした。「結婚してからの生活ができるよう無理して処遇改善加算に上乗せして支給している」「処遇改善加算は利用者の負担が増える。複雑な加算にせず介護報酬を上げてほしい」「景気が少し良くなると介護に人が入ってこない。人手不足で運営できなくなる」などの話が続きました。

 小規模デイは来年4月からスプリンクラーの設置が義務付けられましたが、300万〜500万円かかり、助成金が決まっていない中で対応が迫られます。「3か所の小規模デイを運営していてスプリンクラー設置に1千万円が必要。資金がないので人件費を削りケアの質を落として工面するしか方法がない」との訴えがありました。また、有料ホームや他の小規模デイから、人手不足が大きな事故につながるリスクと隣り合わせの過酷な実態も語られました。

区全体に、全国に

 初めての集いを取り組んで思うことは、人手不足と低賃金、よいケアを提供したいという課題はどこの事業所とも理解し合えることであり、次は区内の全事業者に働きかけなければいけないとの思いを持ったことです。地域で熱心に取り組んでくださる土屋のりこ区議からは「区は“倒産した事業所はない。区民からの声は上がってない”と言っている」との報告があり、大きな運動にしていかなければなりません。

 夏に開催されるZENKOの会場は足立区内なので、これを機に、2回目の集いを開催し、課題の解決に向けた具体的な行動を取り組んで多くの参加を実現したいと思います。そして改憲、平和、基地、原発、保育等々の運動に合流して全国的な課題に押し上げたいと思います。さらに、「制度の持続可能性の確保」を理由に財源を抑制する国の態度を打ち破る運動、サービスの抑制に対して小規模ケアの実践を取り組み、重要性を認めさせる運動を広げたいと思います。



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