2017年03月31日 1471号

【籠池「証人喚問」は出発点/国家の私物化で極右に便宜/「アベ友」疑惑の徹底解明を】

 切り捨てた「トカゲの尻尾」に噛みつかれた−。学校法人・森友学園をめぐる問題で安倍晋三首相が窮地に立たされている。政権としては森友学園理事長の「虚言癖」を強調することで、安倍首相の関与もウソだと印象づけたいのだろうが、そうもいかなくなってきた。これは安倍政権の極右体質に起因する「アベ友」スキャンダルなのだ。

焦点そらしに注意

 「安倍首相から夫人を通して小学校設立に100万円の寄付があった」

 森友学園・籠池泰典理事長の爆弾発言を受け、事態は大きく動いた。あれほど嫌がっていた理事長の国会招致に自民党が「証人喚問」という形で応じたのである。その理由は「首相に対する侮辱だ」(竹下亘・国会対策委員長)というもの。首相が侮辱されたから国会で吊し上げるなんて無茶苦茶だ。どこの独裁国家かと言いたくなる。

 さて、本稿が皆さんに届く頃には証人喚問(3/23)は終わっている。御用メディアに「籠池劇場」を面白おかしく報道させ、「やはり嘘つき親父だ」「首相に関する発言も話を盛っていたんだ」と世間に思わせる−。官邸の狙いはこんなところであろう。こうした焦点そらしの術中にはまらないためにも、問題の本質を再確認しておきたい。

 安倍首相やその取り巻き連中は新自由主義政策によって国家を私物化し、極右思想や改憲志向を共有する「お友達」に便宜を図ってきた。「安倍晋三記念小学校」を作ろうとしていた森友学園への国有地激安売却はその一例である。つまり、森友疑惑の背景には「アベ友」優遇を通じた日本右傾化計画がある。追及すべきは、安倍政権と極右勢力の癒着構造なのだ。

安倍の威光をバックに

 森友学園の広告塔だったくせに、騒ぎが大きくなった途端、籠池批判を口にし始めた「手のひら返し右翼」たち。その一人に安倍政権の有力ブレーンである八木秀次(麗沢大学教授)がいる。いわく「籠池氏は愛国と言えば何でも許されると考えているフシがあった。『なんちゃって保守』とひとくくりにされたくない」(3/15毎日)。

 たしかに、籠池理事長は悲願の極右小学校設立のために、工事契約書の偽造疑惑など手段を選ばなかった。「愛国無罪」的な発想だったことは事実だろう。しかし、安倍応援団の政治家や財界人、右派文化人の賞賛と支援がなければ、彼の計画がここまで進むことはなかったはずだ。

 連中は森友学園が実践する軍国主義教育を安倍流「教育改革」の先進例ともてはやした。あげくのはては現職の総理大臣夫人が新設校の名誉校長に就任し、「主人も大変すばらしいと言っている」と太鼓判を押した。つまり首相がバックにいるとみたからこそ、財務省をはじめとする国の行政機関が異例の「森友支援」に動いたのである。

 また、森友側の要望を受けて私立小学校の認可基準を緩和し、財務面でも教育内容の面でも問題だらけの学校法人に小学校設立の道を開いたのは、維新の会に支配された大阪府であった。橋下徹前知事及び松井一郎現知事と安倍政権が密接な関係にあることは説明するまでもない。

 松井は今になって森友学園の刑事告訴をちらつかせている。口封じを狙った脅しであろうが、これもまた権力の私物化にほかならない。

橋下、松井も招致せよ

 数々の虚偽答弁で火だるまになっている稲田朋美防衛相は「アベ友中のアベ友」だ。

 稲田は当初、森友学園との密接な関係を否定し、「弁護士として事件を受任したことも裁判を行ったこともなく、法律相談を受けたこともない」と断言していた。ところが、森友側の弁護士として民事訴訟に出廷した記録が発覚すると「記憶違いだった」と答弁を訂正。しかも「私の記憶にもとづいた答弁であって、虚偽の答弁をしたという認識はない」と開き直った。国会愚弄もはなはだしい。

 こんな人物がなぜ「将来の首相候補」などと評されているのか。安倍首相の寵愛を受けているからである。歴史修正主義者の裁判の弁護人だった稲田は、安倍によって自民党にスカウトされた。衆院議員に当選後は党内若手極右議員の中心人物として活動してきた。もちろん、安倍が特別顧問を務める日本会議国会議員懇談会のメンバーだ。

 そんな稲田を安倍は「女性議員の星にしたい」として、閣僚や自民党の要職に抜擢し続けた。極右思想を共有し、なおかつ自分に忠実な稲田を心底気に入っているからであろう。「アベ友」優遇人事が、能力もモラルもない人物を防衛大臣にしたのである。

   *  *  *

 籠池理事長一人の証人喚問で終わりにさせてはならない。国会に招致して追及すべき人物は大勢いる。国有地払い下げ当時の責任者だった迫田英典・現国税庁長官。小学校設置認可に関しては橋下・松井の維新コンビ。そして元名誉校長の昭恵夫人等々。

 安倍による国家私物化の醜い象徴「アベ友疑惑」。真相の徹底究明を通して、インチキ政権を崩壊に追い込まねばならない。     (M)



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