2017年03月31日 1471号

【福島原発事故 避難者集団訴訟で初の判決/国と東電の責任を認める 前橋地裁/「津波は予見でき、事故は回避できた」/賠償は6年間の苦しい暮らしに比し不本意=z

 3月17日、前橋地方裁判所前。判決を待ち構える約300人の支援者を前に「一部勝訴」「国の賠償責任を認める」の垂れ幕が掲げられると、一斉に拍手と歓声が起こった。

 福島県から群馬県に避難した避難指示区域内外の137人(提訴当時)が2013年9月、原発事故における国と東京電力の責任を追及し、計約15億円の損害賠償を求めた集団訴訟。判決は事故原因について「津波により非常用電源が浸水し、その機能を喪失した」とし、「東電は巨大津波を予見しており、事故は妨げた」と批判した。国に対しても「規制権限を行使して東電に結果回避の措置を講じさせるべきであった。そうすれば事故を防ぐことは可能だった。国は権限を行使せず安全規制を怠った」と断罪。「想定外」を主張してきた国と東電の責任逃れを許さず、事実上の過失責任を認定した。また、「安全性よりも経済的合理性を優先、非難に値する」と、事故の本質に迫る判決を言い渡した。

 全国20数か所1万人以上の被害者が訴える集団訴訟は、同じく無過失責任論を超えて過失責任を問うている。前橋地裁判決は全国の被害者を励まし、今後の裁判闘争に希望を与えるものとなった。

 一方、損害賠償について一人一人認定し、結果として区域外区域内を差別することなく査定額を出したことは評価できるものの、最高額が区域内350万円、区域外73万円で、ゼロ査定(全部棄却)が半数の72人もいる。過失の認定によって、それを反映した賠償金支払い命令が期待されたが、無過失責任に基づく原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」の合理性を認め、賠償額が低額に抑えられた。

 裁判後の報告集会では、原告から「6年間の苦しい暮らしに比して不本意」「私たちの気持ちは結果的に伝わらなかった」と怒りの声が上がった。「闘ってきたことが、全国のみなさんに(対して)はよかったと言える」。賠償額の低さに悔しさをにじませながらも、判決の持つ意義について語る原告の姿が印象深かった。

 全国から駆けつけた集団訴訟の弁護団は判決を高く評価し、群馬現地の闘いに感謝の意を表明した。郡馬訴訟弁護団は同日、「判決は、国の規制権限不行使が違法であったとして、国に賠償責任を認めた。本件事故が『人災』であることを改めて認定した。被害者が受けた精神的苦痛が適切に評価された金額と言えるかについては、大いに疑問がある」との声明を発した。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS