2017年04月07日 1472号

【1472号主張 国・東電の責任認めた群馬判決 被災者の棄民を許さない】

国の責任問う画期的判決

 福島原発事故避難者が全国各地で起こしている損害賠償訴訟の第1陣となる判決で、3月17日、前橋地裁は東京電力に加えて原発を規制すべき国の不作為責任も認め、一部原告への賠償を命じた。

 判決は、政府の地震調査研究推進本部が2002年7月に「マグニチュード8クラスの大地震が起こる可能性がある」と指摘した「長期評価」を「地震学者の見解を最大公約数的にまとめたもの」で、津波対策上合理的なものだとし、津波対策を怠った東電を「経済的合理性を優先させた」と厳しく非難した。

 2008年5月、福島第一原発を15・7メートルの津波が襲うとする社内試算をまとめていた東電について、判決は津波を「実際に予見していた」と言い切った。この事実は勝俣恒久東電会長らの強制起訴を決めた検察審査会の議決でも認められている。国についても「規制権限を行使していれば事故を防げた」とした。事実を粘り強く積み上げた原告らの闘いと反原発世論が生み出した画期的成果だ。

低賠償の根底に棄民政策

 一方、賠償は原告の半数以上が却下され、認められた原告もほとんどが引っ越し費用さえまかなえないほど低いもの。原告45世帯すべてから法廷で意見を聴き、自宅周辺の視察まで行いながら、裁判所は何を見ていたのか。

 根底には、安倍政権とその意を受けた福島県政による徹底的な棄民政策がある。直近まで「自主」避難者を中心に住宅支援の継続を求めて数十回にも及ぶ交渉が行われているが、国も県も全く耳を傾けなかった。「風評被害撲滅」のための福島県産食品アピールでは日本全国どこにでも出向く内堀雅雄福島県知事は、避難者から逃げ回り、1回も交渉に出席しなかった。県職員が避難者の自宅まで訪れ、住宅からの退去を求めて圧力をかけた。首都圏に避難した人の半数にPTSD(心的外傷後ストレス障害)との調査結果もある(2/26福島民友)。

 住民を無視して強引に進められた避難指示区域の解除は居住制限区域(年間外部被曝線量20〜50_シーベルト)にまで及び、避難の象徴だった飯舘(いいたて)村も3月末で解除される。日本のあらゆる法令で年間1_シーベルト以下と定められている一般市民の被曝限度。その50倍の地域に妊婦・子ども含め強引に帰還させるものだ。賠償も打ち切られ、帰還困難区域以外の全避難者が「被曝か貧困か」の二者択一を迫られる。

すべての闘いひとつに

 安倍政権と内堀県政が続ける棄民政策は全市民の反対に直面している。「自主」避難者への住宅支援を「続けるべき」と答えた人は最近の世論調査で95%に上った(2/25〜2/26日本世論調査会)。北海道や山形県など、独自の住宅支援継続を決める自治体も増えている。自治体に避難者の生存権を保障させる闘いが各地で作り出されている。

 群馬判決の直後、沖縄反基地運動リーダー山城博治議長が保釈。南スーダンPKOからの自衛隊撤退、国有地払い下げ森友事件への世論の沸騰など、市民の闘いが安倍政権を後退させ始めた。すべての闘いを結集し総反撃の時だ。

 原発訴訟勝利、被災者の完全救済、全原発廃炉の闘いを強めよう。怒りをひとつに安倍を打倒しよう。

  (3月26日)
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