2017年04月14日 1473号

【共謀罪Q&A/政府に物申す者は皆、犯罪者/パソコン、スマホも覗かれる】

 すべての市民を合法的に監視し、もの言うことを萎縮させる共謀罪。法案は4月6日に審議入りし、会期内成立が狙われている。過去3度廃案になった共謀罪法案を完全に葬り去るには、市民の圧倒的な反対の声で国会を包囲する必要がある。共謀罪が危険なわけを反対署名の対話の中で知らせよう。

テロ対策とは無縁

Q キョウボウ罪って、凶暴罪でしょ。政府が「テロ等準備罪」と言うように「テロ」犯は早めに見つけて捕まえるべきでは。

A 「キョウボウ」と言えば、凶暴、狂暴などの漢字も浮かびますが、キョウボウ罪法案は、狂暴な人が凶暴な犯罪を行う前に捕まえやすくするものではありません。2人以上での計画・準備=共謀を罪に問うものです。政府は「テロ等準備罪」だと言い換えていますが、全くのごまかしです。

 なぜごまかしか。まず「テロ準備」を罰する法律はすでにできているからです。

 「テロ」で思い浮かべるのは、例えば、9・11テロのハイジャック、オウム真理教のサリン、劇場での乱射などの無差別殺人です。こんな凶悪犯罪は未然に防ぎたいものです。今の法律に「共謀罪」がないから、未然に防げないのでしょうか。違います。

 刑法には、殺人や放火などの凶悪犯罪に対しすでに予備罪があります。他の法律も含め共謀罪が15、陰謀罪が8など、72の主要重大犯罪について予備などの段階で処罰できることになっています(海渡雄一弁護士『「共謀罪」なんていらない?!』合同出版)。 未然に防げないのは、法の不備が原因ではありません。実行にいたる情報を見逃したり、意図的に泳がせたりする権力・警察の姿勢にかかっているのです。国会に提案されている共謀罪法案は、新たに277の犯罪行為に共謀罪をつくるものです。盗んだ山の木で作った木材・炭などを運ぶ森林法違反など凶暴でもないのに、計画だけで犯罪とするものがたくさんできます。テロ対策と無縁であることは一目瞭然です。

Q 東京オリンピックの開催に必要な法律なのでしょう。外国からいろんな人が入ってくるから、治安強化のための国際協力が不可欠では。

A 安倍首相は1月23日、施政方針演説の中で「条約の国内担保法を整備し、本条約を整備することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックをできないと言っても過言ではありません」とアピールしました。

 条約とは国連「越境組織犯罪防止条約」のこと。締結国は187か国・地域に及んでおり、締結しないと情報共有などの捜査協力が得られない、だから共謀罪ができないと条約が締結できず、諸外国が不安に感じ、オリンピックに参加しない―という理屈なのでしょうが、変な話です。

 「東京は世界で最も安全な都市の一つだ」と言ってオリンピック招致演説をしたのは安倍首相自身で、確かに刑法犯は戦後最低、凶悪犯も大きく減っています(これはホント)。重要なことは、条約の締結には現在の法律で十分であるということです。国連が審査するわけでなく、日本政府が通告をすればいいのです。

 そもそも、この条約はテロ対策のためのものではありません。マフィアなどの経済犯罪対策が目的です。2000年7月の条約起草委員会の席上、「テロリズムについては本条約の対象とすべきではない」と強く主張したのは日本政府でした(3/26東京新聞)。テロ防止のための条約がいくつもあるからで、日本はすべて入っています。安倍政権は平然とウソをついています。

拡大する盗聴網

Q 犯罪につながる怪しい人が捜査されるんでしょう? 私には関係ないですね。

A 犯罪しそうな人をどうやって見つけるか、考えてみてください。「怪しい人」を探すには、手当たりしだい調べることになります。しかも、いつ「共謀」するかもわからないから、24時間監視する。1億人を24時間見張るなんて無理、と思いませんか。

 ところが、こんな途方もないことが実際は行われているのです。CIA(米中央情報局)が全世界の電子メールなどをチェックしていることは、映画『スノーデン』にも描かれていました。部屋に置いたノートパソコンのカメラで、家の中をのぞかれている場面は衝撃です。機密情報を公開するウィキリークスが3月8日に暴露したCIAの内部資料では、アンドロイドやiPhoneのスマホの他、あらゆるコンピューターに侵入できるといいます。電源が入ってなくても、のぞき見できるのです。部屋のテレビを盗聴器に使うこともできるのです。

 こうした捜査は、当然日本でも違法行為です。しかし、共謀罪ができると、犯罪の証拠をつかむことを口実に警察は合法的に盗聴、盗視ができるようになってしまいます。フェイスブックで友人になっていると犯人グループの「一味」なんてことにもなります。

 共謀罪の犯行現場はどこでしょう。あなたのスマホの中とされるかもしれません。

声を上げさせない狙い

Q 「政府おかしいよね」と思うことはあるけど、他人に話すとアウトですか?

A そう、共謀罪の効果はここにあります。犯罪の未然防止ではなく、市民が声を上げるのを未然に抑え込むことです。市民が共同して犯罪を計画することなどありえません。ですが、座り込みやデモを威力業務妨害罪とか往来妨害罪とか、こじつけるのが警察です。政権に反対する者はみな非国民、犯罪者扱いなのです。

 ちょっとした文句でも口にしたら「共謀罪」にされるかるかもしれない―そんな恐れを抱かせるだけで、市民の運動を抑えることができます。正当な要求を掲げてみんなで行動しよう―こんな当たり前の発言や行動を萎縮させようとするところに、共謀罪の大きな狙いがあるのです。

 ここは一歩も譲ってはならないところです。一歩譲れば、権力のやりたい放題に進んでしまいます。市民が共同して、共謀罪法案を完全に廃案に追い込みましょう。



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