2017年04月14日 1473号

【未来への責任(222)/日韓の平和は植民地主義の清算から】

 3月10日、韓国の憲法裁判所は8人の裁判官全員一致で朴槿恵(パククネ)大統領弾劾訴追を認め、罷免を決定した。朴大統領は直ちに失職。後任を選出するための大統領選は5月9日に実施されることになった。

 その後の展開は目まぐるしい。朴前大統領は3月31日、職権乱用、公務上秘密漏洩、賄賂授受など13の容疑で逮捕された。その同じ日、2014年4月に沈没した旅客船「セウォル号」が引き揚げられ木浦港に移送された。事故原因追及を恐れた政府側によって「引き揚げ不能」とされていた「セウォル号」だが、朴が罷免された途端に引き揚げ作業が開始され、朴逮捕のその日に無惨な姿をさらすこととなったのだ。

 朴前大統領は、4月中にも起訴されると言われている。彼女は法廷に引き出され、それらの罪状が暴かれる。

 5月9日の大統領選に向け、各党では候補者を選出するための予備選が進んでいる。ただ、各党の候補者選定はほぼ決着しつつある。共に民主党では、支持率1位の文在寅氏(ムンジェイン)(前回大統領選の候補者)が予備選で連勝し、このまま同党の大統領候補となる勢いだ。国民の党では、安哲秀(アンチョルス)共同代表でほぼ決まりつつある。旧セヌリ党は自由韓国党、正しい政党の二つに分裂したが、自由韓国党は洪準杓(ホンジュンピョ)氏(慶尚南道知事)、正しい政党は劉承旼(ユスンミン)氏(元セヌリ党院内総務)に候補者が決まった。

 今後は、大統領選告示を前に、保守派の候補統一、保守・中道派の連携などが模索されると思われる。ただ、誰が大統領選候補となっても、朴前政権の政策が大きく見直されることは確実だ。経済政策、韓米同盟(THAAD配備等)、対北朝鮮政策、そして対日政策など、朴前政権の政策がそのまま踏襲されることはないだろう。

 過去清算―戦後補償問題でも政策の変更が期待される。日本軍「慰安婦」問題に関する2015年12月28日の日韓「合意」については、保守派の劉承旼氏ですら見直すことを公言しているからだ。ただ、韓国の運動関係者は「過大な期待は禁物だ」と言う。過去清算問題について、文在寅氏などはマニフェストにきちんと組み入れている。彼が、過去清算に積極的に取り組んだ盧武鉉(ノムヒョン)政権の秘書室長であったという経歴からすれば当然とも言える。しかし、彼のマニフェストの中でも過去清算は上位には位置づけられていない。進歩派といえども、経済、安全保障との“兼ね合い”で、この問題の扱いを決めざるを得ないという状況にあることは厳然たる事実だ。

 このような中で、私たちは改めて2012年5月24日の大法院判決を想起する。判決は、日本の朝鮮支配を「不法な強占」と言い、「植民地支配に直結した不法行為に因る損害賠償請求権は、請求権協定の適用対象に含まれているとはみなせない」と判断した。植民地主義を否定した画期的な判決だ。これが履行される中でこそ日韓―東アジアの平和は実現する。これを日韓の共通の認識にしていこう。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク事務局長 矢野秀喜)

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