2017年04月21日 1474号

【政府の脅し許さず承認撤回へ 沖縄辺野古 ゲート前座り込み1000日 「心折れず力強く前進を」】

賠償請求で知事を恫喝

 翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は3月25日、辺野古県民集会で「埋め立て承認撤回」を表明。これに対し、27日菅義偉(すがよしひで)官房長官は、会見で知事個人への損害賠償を求めることを尋ねられ「あり得る」と明言した。知事が「撤回」を口にすれば、すぐさま賠償請求をほのめかす。まさに恫喝だ。

 いつもは会見で「仮定の質問には答えられない」と応じる菅が「撤回」についての質問だけは仮定でも言及。さらに撤回による工事の影響について「粛々と進めていきたい」と語った。知事から「『粛々』は上から目線」と指摘されて以降、言葉を封印してきたのをここにきて解禁した。金田勝年法相も29日「(知事が権限を行使すれば)乱用であって、国家賠償法に基づき損害賠償請求は十分にあり得る」と強調した。知事への対決姿勢はむき出しだ。

 国家賠償法に公務員への賠償を求める規定はあるが、この場合求償権があるのは県であり、国ではない。仮に県が公務員個人に賠償を求める場合があるとしても、住民監査請求を経て監査委員会の判断による手続きが必要だ。菅や金田の発言は、県や県民、監査委員会などのすべてを無視したものだ。

 かつて高江ヘリパッド建設に反対する市民を通行妨害で国が訴えた。東京・国立市の景観を守ろうとした上原公子(ひろこ)元国立市長に司法は4500万円の賠償を命じた。そして埋め立て承認取り消しをめぐる最高裁判決。この国に三権分立はなく、政府は司法を権力の番犬に使うことを狙う。

 脅しに屈せず、翁長知事を支える国内外の多くの市民は、知事が自信をもって撤回することを求めている。

川田大使「お引き取りを」

 辺野古新基地建設に向けたオイルフェンス汚濁防止膜の設置に伴うコンクリートブロックの海中投下について、沖縄県は、計画が十分説明されないまま工事が進んでいるとして一時中断指示と資料提出を沖縄防衛局に何度も求めていた。しかし、防衛局は結局無視したまま工事を続行し、3月31日には228個の投下作業が完了と発表した。岩礁破砕許可期限最終日に駆け込むような沖縄防衛局の悪辣な態度に改めて怒りがわく。

 菅官房長官は3月29日、「手続きに全く瑕疵(かし)はない。工事を進めていく考えに変わりはない」と述べ、県からの工事に関する65回以上の質問に対しても「すべて誠実に回答している」と強弁した。

 また、川田司外務省沖縄担当大使も30日、沖縄県議会の要請団に対して民意無視の暴言。政府と沖縄県との5年以内の普天間基地運用停止の約束について、政府が対米交渉をしたかとの質問に「私も知らない」と開き直り、「(辺野古移設が)県民のためになると思っている」と平然と述べた。この3年間すべての選挙で辺野古新基地反対の立場の候補者が勝利し、県民大会、ゲート前座り込みをはじめ民意をこれだけ示しているにもかかわらずである。さらに「沖縄経済の4兆円のうち、2兆円は本土からの移転経費だ」と基地負担の見返りで予算が付いたように放言した。「もうお引き取り願いたい」と琉球新報が社説で論ずるのも当然だ。

 4月1日、キャンプ・シュワブ前の座り込み開始から1000日を迎えた。3月31日の岩礁破砕許可期限が来ても作業を続ける政府への怒りが高まる。「最後まで諦めない」「今日からスタートだ」とスピーチが続く。そこに保釈されたばかりの山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)が駆けつけ、「心折れず、さらに力強く前進しよう」と帽子を振り回しながら何度も拳を振り上げる。参加した400人から歓声があがった。

 くしくも72年前の1945年4月1日、米軍は沖縄本島西海岸の北谷(ちゃたん)・嘉手納・読谷(よみたん)に上陸し占領を開始した。1609年、島津氏の薩摩藩が3千名の武装兵で首里王府を征服したのも4月1日だった。琉球・沖縄は400年以上にわたって日米両国から軍事植民地支配を受け続けている。

市民大弾圧を許すな

 4月6日、国会で共謀罪法案の審議が開始された日、沖縄ですさまじい市民への弾圧が始まった。宜野湾市の普天間基地野嵩(のだけ)ゲートと名護市のキャンプ・シュワブゲート前で高齢者3人が一斉に逮捕された。いずれもゲート付近で米軍などへの抗議を続けている最中に発生。公務執行妨害や傷害容疑、イエローラインを越えて基地敷地内に進入という刑事特別法違反容疑とされるが、県警、軍警による意図的な狙い打ちだ。

 糖尿病やペースメーカーを装着した心臓病の持病をもった高齢の女性たちへの権力犯罪は許されない。不当逮捕に市民らは3人を拘束する宜野湾署、沖縄署への抗議行動に立ち上がった(7日夜に釈放)。

 すべての元凶である安倍政権を即時退陣に追い込むことが今求められている。(N)



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