2017年04月21日 1474号

【島嶼防衛 住民守らぬ自衛隊配備 狙いは中国封じ込め、侵略軍化 南西諸島大軍拡許すな】

 安倍政権の戦争政策は、沖縄高江・辺野古基地建設強行とともに、奄美大島や宮古島・石垣島・与那国島への自衛隊配備として表れている。

自衛隊の南西シフト

 政府・防衛省は今、「島嶼(とうしょ)防衛」の名で、九州南部から台湾へと連なる南西諸島への大規模な陸上自衛隊配備を進めている。

 南西諸島の北部、奄美大島には、これまで航空自衛隊の通信基地、艦船寄港に対応する海上自衛隊の分遣隊が配備されているだけだった。その奄美大島に395億円をかけて隊舎・工場・燃料施設を新築し、地対空・地対艦ミサイル部隊を配備する。2019年3月末に予定される部隊は550人規模。航空自衛隊は監視網強化を目的に50人が加わる。分かっているだけでも600人の増員だ。

 南西諸島の南部、先島諸島でも配備が進む。宮古島・石垣島・与那国島に陸上自衛隊を配備する。宮古島には、351億円をかけて巨大な弾薬庫など施設を整備。陸上自衛隊だけで800人規模の警備部隊・ミサイル部隊を置く。最も西にある与那国島には2016年3月に陸上自衛隊を初めて配備した。沿岸監視隊160人が対空・対艦レーダーで24時間監視し、通信も傍受している。

 レーダーサイトは奄美大島・石垣島・宮古島にも建設され、沖縄本島と合わせて南西諸島を通過する航空機・船舶を監視する体制ができ上がる。

 南西諸島に新たに配置される自衛隊員は当面約1万人、すでに増強されてきた沖縄本島の8千人を加えた事前配備部隊として「島嶼防衛」にあたるとされる。

住民不在の奪還戦

 しかし、自衛隊自身、事前配備部隊で島嶼を「防衛」できるなど考えていない。

 自衛隊隊内誌『Fuji』に掲載された「『離島の作戦における普通科の戦い方』について」では「無数に点在する島嶼を防衛するために我(我々側)は事前配置部隊を分散して配置せざるを得ないため、当初配置した事前配備部隊のみでの敵侵攻部隊の撃破は困難であり、逆上陸による増援または奪回作戦が必要」とする。その「逆上陸による増援・奪還作戦」の戦力となるのが再編整備中の3個機動師団・4個機動旅団中心の緊急展開を目的とした機動部隊だ。人員は数万人規模となる。

 「敵」の攻撃を受けた事前配備部隊は、上陸を許すことをあらかじめ想定する。したがって、逃げ隠れしながら空港・港湾などの施設を確保することに主眼を置いて抵抗し、増援部隊を迎え入れる。増援前に占拠されれば、逆上陸で機動部隊が奪還する。これが「島嶼防衛」のシナリオだ。

 増援・奪還作戦のための装備が、オスプレイ、水陸両用車、強襲揚陸艦とホバークラフト式強襲揚陸艇、ヘリで輸送可能な装輪装甲車(キャタピラに代わるタイヤで軽量化した戦車)、全通甲板のヘリ空母などだ。再上陸のためには制空権・制海権を確保しなければならず、陸海空一体となった戦闘が必要となる。そのための陸・海・空統合運用化も同時に進められている。

 では、住民はどうなるのか。

 まず、上陸のための「敵」の砲撃と地上戦にさらされる。国民保護法による住民保護は、市町村に丸投げされている。事前配備部隊は、侵攻前には必要な情報を関係機関に通報し、侵攻後は住民の島内避難に努める≠フみだ。戦闘の目的は奪還戦に必要な施設・設備への被害を最小限に抑えることであるからだ。奪還作戦が始まれば住民は逆上陸作戦による自衛隊からの空爆・艦砲射撃にさらされる危険すらある。その後も、逆上陸部隊と「敵」の地上戦闘が待ち構える。

 軍隊は住民を守らない。住民が戦闘の犠牲となることは、作戦におり込み済みなのだ。

侵略軍化のための強行

 米ソ冷戦時代、日本政府は旧ソ連を仮想敵国とし、日本列島北東の陸上戦力を強化するとともに、宗谷・津軽・対馬の3海峡封鎖で旧ソ連の海洋進出を阻止しようとした。

 冷戦終結後、世界の軍縮の流れに抗し、自衛隊「生き残り」から軍拡のためにぶちあげたのが「島嶼防衛」の構想だ。この構想を、中国の海洋進出、尖閣諸島領有権問題を利用して「安全保障環境の変化」「途切れのない安全保障体制」などと宣伝。攻撃兵器の大量調達と陸・海・空統合運用による離島奪還訓練=敵地上陸訓練を繰り返し、自衛隊の侵略軍化に利用した。

 安倍が暴力を使った弾圧を繰り返し、ここまで高江・辺野古基地建設強行に執着するのも、将来、自衛隊が使用するためだ。すでに隣接するキャンプ・シュワブの米軍・自衛隊共同使用と嘉手納基地共同使用が決まっている。

 「島嶼防衛」構想は、日米両政府による仮想敵国=中国の南西諸島以北への封じ込めと自衛隊の出撃拠点づくりのため。住民の安全、命を守ることとは全く無縁のものだ。



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