2017年04月21日 1474号

【本当のフクシマ/番外編/原発震災現場から/国・県一体の避難者いじめ/今村復興相暴言は象徴だ】

 「(自主避難は)基本的に本人の責任。裁判でも何でもやればいい」。4月4日、記者会見で飛び出した今村雅弘復興相の暴言。福島原発事故以降「今日こそは避難したい」と毎日思いながら生きてきた筆者もこの発言には怒りに震えた。

 復興庁に抗議電話を掛けると、暗く沈んだ復興庁職員の声がする。「大臣発言に抗議する。原発作業員の基準である年間20_シーベルトを子どもも含め、この先10年も20年も浴びろというのか。人の命を大切にせず何が復興か!」と職員を怒鳴りつけた。事故以来6年間、「今日と同じ明日が迎えられるのか。今日も無事に布団で寝られるのか」と不安に苛(さいな)まれてきた「自主」避難者の苦労に比べれば、受話器を置けば終わりの復興庁職員の電話応対など苦労のうちに入らない。そもそも原発事故の責任は国にある。健康不安を感じて避難した人も救済するのが国の責任であり、子ども・被災者支援法の精神だ。

 やや古いが、福島市が2012年9月にとりまとめた「放射能に関する市民意識調査」では、子育て世代である30〜40歳代で約半数の人が「今も避難したいと思っている」と回答。妊婦のいる世帯ではその率は57・6%に上る。14年6月の第2回調査でも、30〜40歳代の4割、妊婦のいる世帯の3分の1が避難したいと答えている。避難した人もしなかった人も県民の思いは変わらない。

 復興庁では避難者の支援を自らサボタージュしながら「懸案が一つ解決」などと参事官がツイッターに投稿する事件も2013年に起きた。復興庁のこうした姿勢は、原発事故発生以来6年間、国・県・御用学者が総力を挙げて続けてきた「避難者いじめ」の象徴だ。全国各地の学校で区域外避難者の子どもに対して相次ぐいじめもこうした流れの中にある。子どもたちは大人社会の動きに敏感だ。政府による棄民政策が、避難者をはじめ「自分たちと少しでも違う者はいじめてもいい」とのメッセージになっている。

 今村復興相の過去の経歴を調べていたら興味深い事実が出てきた。東大法学部を卒業後、1976年に国鉄入社。87年の国鉄分割民営化当時、千葉鉄道管理局総務部長として労務対策に当たったと自らのブログで自慢げに語っている。国鉄労働者首切りの先頭に立った人物が、30年後の今日、またも避難者を踏みつけにしたのだ。

 労働者・避難者を踏みつけにし、それをブログで喜々として語る今村。閣僚はもとより国会議員としても不適格な人物であり、今すぐ議員も辞めるべきだ。

(水樹 平和)
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS