2017年04月28日 1475号

【介護・医療標的に社会保障解体/軍事費削り、富裕層課税強化を】

 4月以降、さまざまな料金・価格(ガス、電気、たばこ、トイレットペーパー、はがきなど)が値上げされ、ここに社会保障分野での負担増が加わる。国民年金保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料などの引き上げだ。一方、年金支給額は減らされ、賃金は上がらない。負担が増えて収入が減るため生活は苦しくなっていく。安倍政権は介護と医療を標的にして社会保障制度の解体を強行し、貧困と格差拡大をますます深刻化させようとしている。

介護保険改悪を強行採決

 4月12日、衆院厚生労働委員会で介護保険法「改正」案が強行採決された。この改悪と併せて障害者総合支援法、健康保険法、児童福祉法、社会福祉法、生活保護法など30本の法律見直し案も一括で提案されており、生活は大きく変えられてしまう。

 介護保険法「改正」案は「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」を掲げ、5つの見直し案を示す。見直し案の中には、現役並みの所得のある利用者(年金収入等が340万円以上の単身者、夫婦では463万円以上)に対して2割負担を3割負担へと引き上げること、保険料計算に総報酬制を段階的に導入することが含まれている。

 3割負担の根拠は「世代間・世代内での公平性の確保」「制度の持続可能性を高めるため」とされる。もっともらしい文言だが、2015年8月に年金収入等が280万円以上の利用者に1割負担から2割負担にしたばかりであり、取りやすいところからまず取っておき、その後に負担増の範囲を広げる狙いが透けて見える。すでに2割負担の対象拡大が検討課題とされ、安倍首相もそれを肯定する答弁をしている。

 2割負担への引き上げは、介護サービス利用の抑制となって問題が現実化している。厚労省も対象者の41・4%が利用回数を減らしていることを明らかにした。穴埋めを家族が行わざるをえず、家族の負担が増えることになった。安倍政権は「介護離職ゼロ」を謳(うた)うが、実際には介護離職を深刻化させるのだ。

 総報酬制の導入とは、40〜64歳の2号被保険者保険料を現行の「加入者数に応じた負担」から「報酬額に比例した負担」にすることだ。賃金の高い被保険者が多い健康保険組合では負担増となり、国庫補助削減、実質増税となる。

 他にも、実績評価に応じて交付金を出すとされ、介護費用抑制に向けた自治体間の競争をあおっている。そのため、自治体間の介護サービスの格差が広がりかねない。

続々と医療費値上げ

 4月から75歳以上の後期高齢者医療保険料の特別軽減が5割から2割に縮小される。これにより該当者の6割ほど約900万人の保険料が2〜10倍に増える。8月から70歳以上の医療費負担上限の引き上げが行われる。年収370万円未満の課税世帯では、外来が月2000円増、外来と入院が月1万3200円増となる。10月からは65歳以上の医療療養病床の入院居住費が1日320円から370円に上がる。来年4月には食事代も値上げされる。

 2025年の医療提供体制を示す「地域医療構想」で、入院患者を在宅医療に移して医療費を削減するため入院ベッドを15万床削減する計画が明らかになった。在宅医療の受け皿づくりの展望などなく、このままでは大量の医療難民をつくることになる。

 年金生活の夫婦の平均的な家計を見ると、収入が月21万3379円、支出が月27万5706円、月6万2327円の赤字となっている(2015年総務省家計調査)。貯蓄を取り崩して赤字補てんをしているのが現状だ。ここに医療と介護などの負担が増え、しかも4月分から年金が0・1%削減されるため、家計の赤字がますます増えていく。

 医療や介護給付を控えると重症化につながり、費用を増やす結果となることは少し考えれば誰でもわかる。自己負担増の回避を優先すれば、医療や介護のサービスを受けられないまま死を迎える人が続出する。医療や介護の制度改悪は、こうした残酷な非人間的事態をもたらすのである。

対抗策はなにか

 団塊の世代が後期高齢者になる2025年以降、社会保障費が急増するとされる。それを口実に、安倍政権は医療と介護など社会保障給付を抑制し、高齢者に負担増を押し付けている。国民の生活を保障する社会保障制度を解体しようとしているのだ。

 政府もメディアも、社会保障制度を維持する財源がない、と国民を脅す。だが、軍事大国化を歩む安倍政権は、軍事費を増やして社会保障費を削減している。解決策は、軍事ではなく福祉へ財政を振り向けることにある。さらに、グローバル資本と富裕層に応分の負担をさせることだ。

 弱者に矛盾を押しつける政策を止めさせ、社会保障制度を充実させる根本的政策転換を求めなければならない。

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