2017年04月28日 1475号

【高浜再稼働認めた大阪高裁 関電追随・世論無視の不当判決/3・11フクシマ以前へ回帰】

 高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを認めた2016年3月の大津地裁の仮処分決定を不服として関西電力が申し立てていた抗告審で3月28日、大阪高裁は一審の決定を取り消し、再稼働を認めた。また広島地裁も、伊方原発3号機の運転差し止めを求めて住民が起こしていた訴えを3月30日、退けた。いずれも電力会社追随、脱原発が大半を占める世論無視の不当決定だ。福島原発事故などなかったかのように3・11以前に回帰しようとする司法の反動≠ニいえる。

重大事故発生も「前提」

 大阪高裁の決定は、関西電力の主張だけをそのままなぞったひどいものだ。一審の大津地裁が安全とは認められないとした原子力規制委員会の新「規制基準」について、福島原発事故を踏まえ「原発の安全性審査に関する体制は強化された」とした上で、新規制基準に適合した原発は「審査の過程に不合理な点がない限り安全性を具備する」と、大津地裁とは正反対の判断を示した。一審が「全国で20個所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来している」とした指摘を覆すに足りる根拠を大阪高裁は全く示すことなく再稼働を容認した。田中俊一規制委員長自身が「安全とはいえない」と発言した基準を「安全」と認定する許しがたいものだ。

 さらに許せないのは、「第5層」レベルの事故について規制対象としなかった新規制基準を「不合理であるとはいえない」としたことである。第5層とは「炉心に著しい損傷が生じ、原子炉格納容器が大規模破損するなどして放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態」のことであり、最も深刻な事故を意味する。新規制基準を「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容」であるべきとした大津地裁の決定を影も形もなく消し去った。大阪高裁の決定は、周辺住民が原発の重大事故で「死んでも、被曝しても、住めなくなってもよい」というものであり、ここまで来ると犯罪に等しい。

前規制委員の警告無視

 一方、広島地裁の決定も、一方的に四国電力の主張を引き写しただけの不当なものだ。伊方原発は日本最大の地震帯・中央構造線の真上に位置。中央構造線の末端で1年前、熊本地震が起きたが、危険を指摘する住民の声に応えなかった。「入倉・三宅式」(基準地震動を低く導くと批判されている計算式)による地震の過小評価についても、四電による想定の合理性について確証が得られなかったとしながら直視しなかった。

 「国土地理院が推定した熊本地震の断層面積を、入倉・三宅式に入れて計算したところ、地震モーメント(地震の大きさ)や断層のずれの量が実際の値に比べて非常に小さくなった。入倉・三宅式を使う限り、原発の審査においても震源の大きさは過小評価される」。こう指摘するのは島崎邦彦前規制委員長代理だ。だが田中委員長は2016年7月、「先輩」のこの警告も無視。今回、広島地裁も追随した。規制委も司法も安倍政権が進める原発再稼働推進路線を追認するだけで、住民の生命や健康・財産を守ろうとする責任感は見られない。

腐敗した電力労使

 関電は、大阪高裁の決定直後、再稼働と電気料金の値下げを進める方針を表明。原発停止が電気料金値上げの原因であるように不当な宣伝を繰り返している。関電労組も再稼働を前提に「賃金のカットを取りやめるよう」会社に要求する方針だ。住宅支援が打ち切られ、家を追い出されようとしている避難者の現実を一切顧みることなく、労使揃って「今だけ、カネだけ、自分だけ」―こんな腐敗しきった関電に原発の運転資格がないのは当然だ。

 高浜、伊方両原告団は、いずれも、不当決定を「行政、電力会社追随」「司法の責任放棄」と厳しく批判する声明を発表した。

 今、東芝は経営破たんし、高速増殖炉は挫折。高レベル放射性廃棄物の処分の見通しも立たない原発に未来はない。世論調査は福島原発事故以降、一貫して脱原発が多数だ。原子力ムラの中心、日本原子力文化財団の調査でさえ6割が原発をやめるべきと答える。

 市民の声に耳を傾けず、原発再稼働と輸出、避難者の住宅追い出しを強行する安倍政権を打倒し、全原発廃炉を実現しよう。

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