2017年04月28日 1475号

【原発事故/周産期死亡率明らかに増加/健康障害の進行に警鐘―全国小児科医の集い】

 「第5回こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い」(代表―高松勇医師)が4月15日、都内で開催された。

 小児甲状腺がんの異常多発を検証し、警鐘を鳴らしてきた医療問題研究会の林敬次医師が報告した。

 福島原発事故で汚染された地域における周産期(妊娠22週〜生後7日)死亡の増加についての論文を著名な医学雑誌『Medicine』に発表。これを日本の地方紙が取り上げ、山下俊一氏の“批判”を引き出す。その反批判を通じて、放射能汚染度との明確な因果関係の存在を明らかにしてきた。高度汚染地域(0・25μSv/時以上の地域が多い福島・岩手・宮城・茨城・群馬・栃木の6県)も中等度汚染地域(千葉・埼玉・東京)も、周産期死亡率は、事故直後急増し、一度下がり、10か月後に統計的に有意な上昇があり、その後も高いままという同じ傾向が認められる。流産や乳児死亡の増加も周産期死亡と同様の傾向にある。

 小児甲状腺がんの異常多発(先行検査で116人<良性腫瘍1人含む>、本格検査で69人―2月20日発表分)は、津田敏秀岡山大学大学院教授の完璧な報告の中で科学的に立証されている。1次検査でB・C判定とされ、2次検査では通常診療となった2523人の中から事故当時4歳の男児に甲状腺がんが見つかったのに報告されていなかった事実が判明した。全国平均と比較した「外部比較」で20〜40倍、福島県内を比較した「内部比較」で汚染の強い所に多発していることで「異常多発」は明らかに。放射線による健康障害の進行はきわめて深刻だ。

 集いでは次に、原発事故避難者へのいじめ問題について報告がなされた。福島原発かながわ訴訟原告団団長の村田弘(ひろむ)さんは、避難者に投げかけられた「600万円が歩いてくるぞ」の心ない言葉に衝撃を受けた。いじめの背景には、賠償金をからめた線引きという国・福島県の分断政策がある。ZENKOかながわの青島正晴さんは、150万円脅し取られているのにいじめと認めない横浜市教委の責任逃れと隠蔽体質、セシウム汚染牛を給食に出し、1・17μSv/時の腐葉土も「安全」として放置する被ばくへの無理解を批判した。

 参加者から活発な意見が続く。福島被ばく訴訟を闘う井戸川克隆前双葉町町長は「現実は足元に存在する」と、スピーディ情報を隠し、安定ヨウ素剤を配布せず、過剰な被ばくを防がなかった福島県や、避難指示解除を了解し、避難者を切り捨てている各自治体首長の責任を指摘。双葉町から避難している亀屋幸子さんは「1億円もらっている」「賠償金をもらいながらなぜ戻らないのか」といった大人へのいじめも少なからずある現実に、「好き好んで避難者になったわけではない」と怒りの声をあげた。支援者の一人からは「原発安全神話から放射能安全神話に移り、被ばく問題が消されようとしている。低線量被ばくによる健康障害の問題をもう一度運動側が押し上げ、明確な争点にすべきだ」と今後の方向性が提起された。

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