2017年05月05・12日 1476号

【ノーモア尼崎事故 命と安全を守る4・22集会 遺族の思いを受け民営化の30年をただす】

 2005年4月25日、乗客と運転士107人が死亡、562人が負傷したJR尼崎事故。民営化による利益至上が生んだ忘れてはならない大事故だ。国鉄分割民営化から30年。兵庫県尼崎市で「ノーモア尼崎事故、命と安全を守る4・22集会」が開かれた。集会呼びかけ人の桐生隆文さんに報告を寄せてもらった。

無念の言葉

 「今年は13回忌なのよ」。4・25事故遺族の藤崎光子さんの第一声があった。「今年も尼崎集会を開催するので来てほしい」とお願いした時の声であった。国鉄分割民営化30年の節目として開催した今回の集会。「13回忌」―藤崎さんにとっては、事故で娘さんを亡くされて以降、それだけの月日を事故原因究明とその責任に対するJR西日本の不誠実な態度に向き合ってきた時間の経過を意味し、今なおそれが果たされていない無念の言葉として、私は受け止めた。

 集会で藤崎さんは「JR西日本は言っている言葉としていることが違いすぎている。信用できない会社です」と話し始めた。「裁判の判決はJRの言い分を丸写しにしたものでした。裁判官は『これしか書けません』と言い訳をしていた。私たちは判決を聞き、日本の刑法では個人を裁けません。原因を知りたいという思いと同時に、企業を罰することで『安全』に取り組むことになるのではないか」。こうした遺族らの思いが「組織罰を実現する会」を作るきっかけになった。

 「会」はJR尼崎事故遺族の他、2012年笹子トンネル天井版崩落事故遺族、2016年軽井沢スキーバスツアー事故遺族らが集まって昨年4月に結成された。私たちが集会を開催したちょうど同じ日、同じ尼崎で「組織罰の実現に向けて」と題した公開講演会の開催に至ったと藤崎さんは話す。そして、「組織罰」の創設を求める署名への協力が呼びかけられた。

民営化の破たん鮮明に

 私たちの集会は、「JR30年を検証する」と題した国労本部坂口智彦委員長の講演、安全問題研究会・地脇聖孝さんの「JR北海道の安全と現状」についての報告、現場から国労大阪の組合員による「JR西日本の安全問題―鴫野(しぎの)駅ホーム転落事故と要員配置運動について」の報告と続いた。

 坂口委員長は、JR発足時に闘う組合つぶしを強行した結果、徹底した合理化・効率化政策と大幅要員削減、外注化拡大が公共サービスの低下と安全輸送に大きな影響を与えていることを指摘。膨大な利益を上げているJR本州3社と経営破たんの北海道・四国・貨物などの格差は分割民営化政策の破たんであり、安全輸送と公共交通をまもるために闘うと強調した。

 地脇さんは、JR北海道の経営破たんを招いていることの具体的分析を報告。国労大阪からは、おおさか東線の延伸工事に伴い鴫野駅で2年間21件のホーム転落事故にもかかわらず、カメラモニター設置を理由にホーム要員を昨年11月に廃止した事実が指摘され、組合として駅頭宣伝と署名活動、学校・保育園訪問、地域団体まわりなどに取り組み、要員の再配置を要求しているとの発言があった。

 政府内部からさえ「分割民営化政策の破たん」の声が出てきている現在、犠牲になった各事故遺族の思いを受け止めて、民営化政策を根本からただしていく。その意味が鮮明になった集会であった。



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