2017年05月05・12日 1476号

【東電・国を追及する避難者集団訴訟/千葉/国の過失責任を問う/中間指針超える損害賠償を】

 原発被害者集団訴訟(千葉)第2陣の第7回口頭弁論が4月20日、千葉地裁で開かれた。区域外から避難した6世帯20人が国と東京電力を相手に損害賠償を求めている。3月17日の前橋地裁判決を受けて、原発事故の国の過失責任が追及された。

 原告側弁護団は「東電は2008年に15・7メートルの津波推計を行ったが、国は2002年の地震調査研究推進本部『長期評価』の直後に東京電力に津波推計を行うよう指示していない」と対応の遅れを批判。被告が土木学会の「津波評価技術」を唯一の基準としていることに対し、「想定津波が歴史記録に残る既往最大の津波に基づいており、IAEA(国際原子力機関)ですら不十分と指摘していた。委員の半数を電力会社メンバーで占めていた」と誤りを指摘した。

 損害賠償に関して弁護団は、区域外避難者が国の線引きで区域内避難者と不合理な差をつけられるべきではないと批判。6世帯を紹介し、原告本人尋問を求めた。「いわき市で生まれ育った。妻は出産間近だったため会社を辞め避難した。収入は3分の1となり、地域のコミュニティも破壊された」「放射能が高い福島市から高齢者と障害をもつ孫を連れて避難。預金を切り崩して生活してきた。住宅の無償提供打ち切りはきびしい」「小学生2人を連れて南相馬市原町区から避難した。会社は(この3月に避難指示解除になった)浪江町にあり、再開のめどが立っていない。二重のローン返済、税金に追われている」「いわき市で事故前にスナックを開店したばかりだった。4女は不登校になり悩んだ。住宅支援が打ち切られて苦しい」

 裁判後の報告会には約30人の支援者が集まった。滝沢信弁護団事務局長は「進行協議の席上、裁判官から、損害賠償額は一律1千万円とは別に個別の損害賠償額を請求するのか問われた。群馬訴訟判決を受けての釈明かと思う」と報告。参加者からの「群馬判決は中間指針の合理性を認めている。そこを突破しないと千葉でも損害賠償額が低く抑えられるのでは」との質問に「群馬判決は損害賠償では中間指針を超えられなかった。それが前例になればたまったものではない。コミュニティ喪失など広い意味で損害を被っていることも強調したい」と答えた。本人尋問は、9月21日の第10回口頭弁論から実現の見込みだ。

 なお、区域内避難者18世帯45人が訴えた第1陣は、9月22日に判決が言い渡される。9月2日には、判決前大集会が開かれる予定。

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