2017年05月05・12日 1476号

【第2の森友、加計学園疑惑/真の「アベ友」に流れた巨額の税金/「規制緩和」という名の国家私物化】

 学校法人・森友学園をめぐる問題は、安倍政権による国家私物化の一端を世に知らしめた。そして今、森友問題を上回るスキャンダルが浮上している。安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ人物が経営する学校法人・加計(かけ)学園に関する疑惑だ。異例の「規制緩和」によって親友のビジネスを手助けしたのは安倍首相その人であった。

37億円の土地がタダ

 「極右人脈」に連なる首相の“お友達”に、えこひいきとしか言いようのない「規制緩和」でビジネスチャンスを与える。連中が勢力を拡大することによって、安倍政権の日本右傾化計画が進展する−。こうした構図が森友学園の問題以上に鮮明なのが、学校法人・加計学園にまつわる数々の疑惑だ。

 経緯を簡単にまとめてみよう。子ども園から大学まで幅広い教育ビジネスを展開する加計学園グループ。傘下の岡山理科大が愛媛県今治市に獣医学部を新設するにあたり、約37億円相当の市有地が無償で譲渡された。さらに総事業費の半分にあたる96億円の補助金が県と市から支払われる。これだけでもすさまじい厚遇だが、そもそも国が長年認めなかった獣医学部の新設自体が官邸主導の「規制緩和」によるものだった。

 加計学園トップの加計孝太郎理事長は安倍首相の40年来の友人で、今でもひんぱんにゴルフや食事会をしている。個人的に親しいだけではない。首相は子分の面倒も見てもらっていた。たとえば、傘下の千葉科学大には内閣官房参与を務めていた元文部官僚(木曽功)が学長として天下っている。また、落選中だった萩生田光一(現官房副長官)や第一次政権で首相秘書官を務めた井上義行らが、同大学の客員教授を務めていた。

 安倍昭恵夫人が手掛ける事業に対しても加計理事長は多額の資金援助を行ってきた。そのお返しか、彼女は学園が神戸市東灘区で運営する認可外保育施設の名誉園長を引き受けている。なるほど、安倍首相が「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ」と自慢するだけのことはある(週刊文春4月27日号)。

官邸主導の厚遇

 前述したように、岡山理科大の獣医学部新設は安倍政権による「国家戦略特区」指定がなければ実現しなかった。それまで国は獣医師の質の確保の観点から、獣医学部の新設を抑制する方針をとってきたからだ。事実、今治市が獣医学部誘致のために行った構造改革特区申請はことごとく却下されてきた。

 ところが第二次安倍政権の発足で風向きが変わる。2015年6月、「獣医学教育特区」の設置が唐突に閣議決定された。同年12月には、国家戦略特別区域諮問会議(議長は安倍首相)において、今治市を含む区域が全国で10番目の国家戦略特区に指定された。そして、翌16年12月下旬に獣医学部新設を「一校限り」で認めることが決まった。

 この決定には日本獣医師学会が強く抗議。麻生太郎財務相も「うまくいかなかった時の結果責任を誰がとるのか」と反発したという。それでも内閣府と文科省は獣医学部の認可申請受付を強行した。わずか8日間の期日中に応募したのは加計学園のみ。どう見ても出来レースではないか。

 ジャーナリストの森功によると、加計理事長は日本獣医師会の会長らと面会した際に、安倍首相の後ろ盾を誇示する発言をしていたという(文藝春秋5月号)。実際、「お友達」のビジネスを手助けするために首相自らが権力を行使してきたことは、一連の経緯を見れば明らかだ。「忖度(そんたく)」のせいにして責任逃れできる話ではないのである。

ここでも極右人脈

 森友学園の籠池泰典前理事長がそうだったように、加計理事長もまた安倍政権が進める教育政策に共鳴する人物である。彼は育鵬社の歴史歪曲教科書の採択を支援する「教科書改善の会」の発足時からのメンバーだ。もちろん、岡山理科大の付属中学は歴史・公民ともに育鵬社の教科書を採用している。

 ちなみに、安倍首相によって国家戦略特区会議の今治市分科会委員に任命された加戸守行(前愛媛県知事)は、安倍政権下で発足した教育再生実行会議の元委員である。知事時代、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を県内の中高一貫校に採択させたことで知られる。ここでも「極右・教科書人脈」が動いていたというわけだ。

   *  *  *

 加計学園が全国で展開する教育事業には、2005年度以降だけで約440億円もの公金が流れているという。森友学園への国有地払い下げとはスケールが違う。そのせいか、安倍首相は加計疑惑に触れられることを極度に嫌がっている。社民党の福島みずほ議員に追及された際には、恫喝まがいの言動で質問自体を封じ込めようとした(3/13参院予算委)。

 激しく狼狽する安倍首相の態度をみていると、次の疑問が浮かんでくる。「まだ他にあるのだな」。強引な幕引きを許さず、規制緩和=新自由主義政策による国家私物化の実態をとことん明らかにしなければならない。  (M)



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