2017年05月19日 1477号

【共謀罪 支離滅裂な政府答弁 「一般の人は対象でない」? 「対象にならないことはない」? 市民は監視・権力犯罪は除外】

 安倍政権が今国会で成立を狙う共謀罪法案。「一般の人は対象外」と言ったり、言わなかったり。政府答弁は支離滅裂だ。すべての市民を監視し政権批判を抑え込む一方で、権力犯罪を除外する身勝手さがますます明らかとなっている。場当たり答弁、強行採決を許さない行動を強化し、反対世論を広げよう。

矛盾答弁も平気

 「一般の人」が共謀罪の捜査対象になるのか、ならないのか。この法案の重要な論点なのだが、政府答弁は質問されるたびに二転三転する。

 「『そもそも』犯罪を犯すことを目的としている集団でなければ、共謀罪の対象とはならない」(1/26衆院予算委)と言った安倍晋三首相は「『最初から』でなければ捜査の対象としないとの考え方は大きな間違い。基本的に変わったかどうか、と言う意味で『そもそも』を使った」(4/19衆院法務委)と言い換えた。要するに、犯罪集団に一変すれば、どんな団体でも捜査対象になるのだ。

 安倍は「そもそも」は「基本的な」の意味だと強弁し、「念のために、辞書で調べた」とまで言った。そんな辞書は見つからない。つまり、調べてもいないことを調べたとウソをついたのである。

 安倍のウソつきは常態化している。ウソが政府答弁の根底にあるとすれば、どんな回答を引き出しても意味がなくなる。法務大臣が「一般の人は100%対象外か」と聞かれ「そうだ」と答えたかと思ったら、副大臣が「対象にならないことはない」と否定する。正反対の答弁をしても気にも留めていない。

 「一般の人は捜査されるはずはない」との答弁は、「捜査された人は一般の人ではない」=警察にフリーハンドを与えるということだ。こんな問答を30時間ほど繰り返して「審議を尽くしたから採決」とされてはたまらない。

対象は「フツーの人」

 自民党が「一般の人」をどう見ているのかを示す文書がある。動画サイト「ニコニコ」が開催した「ニコニコ超会議」(4/29〜30、総務省や防衛省などが後援)。4年前に安倍が迷彩服で戦車に乗り込むパフォーマンスをしたイベントだ。今年もブースを出した自民党。カレーをふるまいながら「ピリ辛!政策」チラシを配布した。「居酒屋とか、LINE(ライン)とかで冗談言っただけで逮捕?!とかってツイートをたまに見かけるけど、こういうのは、まったくのウソ。『デマ』を流す人は、この法律ができたら困るから??」

 「テロ等準備罪(共謀罪)」はテロを取り締まるためだと言う自民党。危険性をツイートする人は自分が困るから反対するのだから、そんな奴らはテロリストだと言うわけだ。チラシには「もちろん、フツーの人が捕まるなんてことはない」とある。共謀罪を批判する者は「フツーの人」ではないことになる。

 かつて、自民党議員石破茂が幹事長だった2013年、秘密保護法案に反対する国会周辺デモを「テロ行為」と言った。彼らにとって「フツーの人」はデモには行かない人なのだ。デモに出ても、法案の危険性を考えても、「テロリスト」。何も言わなくても監視。それが共謀罪の真実だ。

権力犯罪は除外

 すべての市民を監視の対象とする一方、権力の犯罪は免罪していることが浮かび上がった。衆院法務委員会(4/25)で参考人として反対意見を述べた京都大学大学院高山佳奈子教授は「公権力を私物化するような行為が除かれている」と暴露した。

 「国際組織犯罪防止(TOC)条約」が対象とした4年以上の懲役・禁固刑を定めた676の犯罪を277に絞り込んだとした安倍政権。高山は「警察の『特別公務員職権乱用罪』や『暴行陵虐罪』は懲役10年や7年という重い犯罪類型だが、共謀罪の処罰範囲から除外されている」と指摘。他にも、政治家に科せられる「公職選挙法違反」罪や「政治資金規正法違反」罪、民間の「わいろ罪」「商業わいろ罪」も除かれている。

 高山は「世界のトレンドとして商業わいろ罪は厳しく規制していかなければならない方向だが、日本は逆行している。国連にも全く説明できない状態になっている。政治家や企業の汚職の共謀は処罰から外れている。法案ができる前に経団連の手は入っていると思う」と語っている。

 TOC条約加盟のための法整備といいながら、国連にも説明がつかない状況にしているのは、安倍政権だった。事前に経済界の要請に応えて対象とする犯罪を選んだとすれば、公権力による国家私物化の共謀そのものだ。

 政権に異議を唱える市民を一網打尽にしようとする共謀罪。権力者の特権を守ろうとする共謀罪。市民を「テロリスト」にする共謀罪。断固阻止だ。

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