2017年05月19日 1477号

【軍事的緊張煽る安倍/朝鮮核開発テコに戦争政策推進】

 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核開発・ミサイル発射実験を巡る米国・日本・朝鮮の軍事力誇示が続いている。

 朝鮮は4月に連続した国家的行事に合わせ、ミサイル発射実験を繰り返し、自走砲300門を並べた一斉砲撃の映像を公開した。

 一方米国は、原子力空母カールビンソンを主力とする米海軍第1空母打撃群を西太平洋から朝鮮半島近海に送り込み、日米軍事演習を実施。定例の米韓軍事演習を合わせ、軍事的圧力、武力による威嚇を強めた。

 軍事を外交の手段として用いる米朝両政府は、東アジアの軍事的緊張をいたずらに高め、民衆の命を危険にさらしており断じて許されない。だが双方は対話への動きに舵を切らざるをえなくなっている。ところが米朝が作りだした緊張を追い風として自らの戦争政策を加速させているのが安倍政権だ。その悪質さにおいては米朝と何ら変わらない。

対話による解決の動き

 核開発は戦争挑発であり決して容認できない。だが度重なる日米韓好戦勢力の朝鮮包囲がさらなる核開発に口実を与えている。朝鮮が核実験・ミサイル発射の度に表明してきたのは「攻撃すれば反撃する」だ。「手出ししなければ攻撃しない」との意思表示ともいえる。今回の米海軍第1空母打撃群派遣に朝鮮外務省は「向こう見ずな侵略に向けた行為が深刻な状況に達した」「強力な武力によって自らを防衛する」と主張する。

 また、米国も「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」(ティラーソン国務長官)としながらも「我々の目的は朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換ではない」(同)、「核・弾道ミサイル計画をあきらめさせるため、国際社会が外交、経済的な圧力を使っていく」(ペンス副大統領)、「私たちは戦いを求めてはいない」(ヘイリー国連大使)と武力行使には触れず、4月26日には国務・国防・情報3長官の異例の共同声明で「朝鮮半島の平和的な非核化をめざす」とした。また、トランプ大統領は5月1日「適切な状況の下」でなら金正恩(キム・ジョンウン)委員長との直接対話にも応じる意向を示した。

 この間、ロシアは朝鮮に対する米国の単独行動に釘をさし、中国は米・日・韓など関係国の共同による問題解決を訴え、ASEAN(東南アジア諸国連合)も米国からの制裁強化要請には応じず「対話と緊張緩和」を求めている。経済制裁は経済的暴力であり、痛めつけられるのは金正恩ではなく、朝鮮民衆だ。

 対話を余儀なくされている米政権を含め、程度の違いはあるものの対話と交渉へと進みつつある国際的流れを強め、一切の軍事威嚇を封じなければならない。

対立が必要な安倍政権

 こうした対話への流れの最大の障害は安倍政権だ。

 トランプ政権の「あらゆる選択肢」の現時点での意図は「経済制裁を強化し外交圧力を加える」(4/27上院向け説明会)ことにあり、「(アメリカは)北緯38度線の北側に入る理由を探しているわけではない」(5/3ティラーソン国務長官)というように軍事侵攻そのものではない。

 にもかかわらず、安倍はあえて「トランプ大統領が、原子力空母カールビンソンを派遣しすべての選択肢がテーブルの上にあることを言葉と行動で示している」として朝鮮攻撃の可能性を印象付け、脅威と緊張を煽(あお)り立てる。それは、同盟国日本への朝鮮からの核攻撃の「脅威」を国民に思い起こさせる。

 4月21日、内閣府は「弾道ミサイル落下時の行動について」とのマニュアルを公表した。大阪府は府立学校に「万一の対応」を指示し、生徒向け文書が張り出された学校まで出た。また滋賀県では幼稚園・小中高校で保護者向け文書を子どもに持ち帰らせた。29日のミサイル発射情報では東京メトロ、東武鉄道、北陸新幹線が運転停止などの措置を取った。朝鮮と国境を接する韓国メディアから揶揄(やゆ)されるほどだ。

戦争法発動の「米艦防護」

 緊張と混乱を自ら作り出した日本政府は、朝鮮のミサイル発射時に防衛出動が可能な「武力攻撃切迫事態」指定を検討、合わせて「朝鮮半島有事」に在韓邦人保護の名目で自衛隊派兵ももくろんだ。

 そして米海軍第1打撃部隊の「武器等防護」として、海上自衛隊は軽空母「いずも」と護衛艦「さざなみ」を出動させた。戦争法の発動だ。航空自衛隊は米空軍B1B爆撃機と迎撃訓練を行った。

 さらに5月5日、自衛隊への巡航ミサイル導入に向け来年度予算案での調査費計上などの検討本格化がリークされた。

 一連の動きは、国民保護法=銃後の体制づくりと戦争法の実行を進めるものに他ならない。とくに、米軍・自衛隊の共同行動によるあからさまな軍事的圧力は憲法違反の武力による威嚇≠セ。巡航ミサイルはどう言いつくろっても敵基地攻撃のためのみに存在する侵略兵器であり、その保持そのものが違憲だ。

 その狙いは朝鮮への威嚇にとどまらない。戦争法発動・改憲で集団的自衛権を行使し、グローバル資本主義諸国の軍事同盟による軍事力を背景とした外交=地球儀俯瞰(ふかん)外交を縦横無尽に展開することだ。

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