2017年05月19日 1477号

【スノーデン暴露の衝撃/米国から監視技術をもらっていた!/共謀罪は監視社会の総仕上げ】

 共謀罪法案の論点として、監視社会化の危険性が浮上している。そんな中、驚きの事実が明らかになった。米国家安全保障局(NSA)が日本の協力の見返りに、インターネット上の電子メールなどを幅広く収集・検索できる監視プログラムを提供していたというのだ。共謀罪の導入は、市民監視システム構築の総仕上げなのかもしれない。

盗聴協力の見返り

 調査報道を手がける米国のネットメディア「インターセプト」は4月24日、米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデンが内部告発した機密文書に、日本に関する13ファイルがあったとして公開。NHKと協力して報じた(4月24、27日放映「クローズアップ現代+」)。



 報道によると、NSAは60年以上にわたり、日本国内の少なくとも3か所の米軍基地で諜報活動を展開。日本側は施設や運用を財政的に支援するため、5億ドル以上を負担してきた。その見返りとして、情報の共有や米国が開発した大量監視プログラムの提供が行われたという。

 04年の文書には、通信機器を修理・製造する施設を横田基地内に造る際、建設費や人件費(約700万ドル)のほとんどを日本側が負担したとの記述がある。ここで製造された装置は世界各地における米軍の諜報活動に使われた。「アフガニスタンでのアルカイダ攻撃を支えたアンテナ」などである。

 13年の文書は、大量監視プログラム「XKEYSCORE(エックス・キー・スコア)」を日本側に提供したとしている。“スパイのグーグル”と呼ばれるこのプログラムに個人の名前やキーワードを入力すれば、関連するメールや電話の会話、ネットの閲覧履歴など、検索者の望むあらゆるデータを抽出することができる。個人のパソコンやスマートフォンの内蔵カメラを遠隔操作し、盗撮や盗聴をすることも可能だ。

 スノーデンの内部告発は、大量監視に必要な技術を日本がすでに持っていることを明らかにした。だからこそ、安倍政権は本格稼働のための法整備として、日常的な市民監視を可能にする共謀罪の導入を急いでいるのである。

改憲の武器に使う

 かつて横田基地で勤務していたスノーデンは、NSAが外国政府を大規模盗聴の共犯に仕立てる手口を次のように語っている。

 「自分たちはすでに諜報活動を実施していて、有用な情報が取れたが、法的な後ろ盾がなければ継続できない、と外国政府に告げる。これを合法化する法律ができれば、もっと機密性の高い情報も共有できると持ちかけられれば、相手国の諜報関係者も情報が欲しいと思うようになる。こうして国の秘密は増殖し、民主主義を腐敗させていく…」(小笠原みどり/16年8月22日付「現代ビジネス」)

 秘密保護法を制定する際、安倍政権は「この法律がないと同盟国と機密性の高い情報を共有できない」と主張していたが、あれはこういうことだったのだ。共謀罪の導入も同じことが言える。金田勝年法相は昨年9月、ケネディ駐日大使(当時)と「共謀罪法案再提出」の件で会談。大使の「激励」に、金田は「米国の知見や情報の共有をお願いしたい」と応じたという(サンデー毎日2月19日号)。

 米国の誘いに日本政府は進んで応じたに違いない。連中には大量監視の技術を何としても手に入れたい動機があるからだ。安倍晋三首相の悲願である憲法「改正」。これを実現するために、反対運動を封じ込める強力な武器が欲しかったのである。

標的は一般市民

 共謀罪の導入がもたらす監視社会の危険性を指摘しても、「安全のために一定の監視は必要」という反応が返ってくることがある。「警察に睨(にら)まれるようなことはしないから関係ない」との声も多い。

 そんな人にこそスノーデンの警告を聞いてほしい。彼が言うには、テロに関する情報収集は大量監視システムの最小部分でしかなく、「人びとの安全にはまったく貢献していません」。では、主たる標的は何か。国家権力が「反政府的」とみなす市民やジャーナリストの活動である。

 たとえば、英国の諜報機関GCHQは、世界的な人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルを「安全保障上の脅威」とみなし、スパイしていた。大手報道機関の記者や編集者が発信するメールも収集していた。

 大量監視によって収集されたデータは運動つぶしにも使われている。標的となる人物の社会的信用を失墜させるために、否定的な情報をつかみだし、ネット等に「流出」させるのだ。NSAはイスラム過激派とみなす人物のポルノサイト閲覧履歴をモニタリングしていた。グループ内の亀裂要因となる部分を見つけ、分裂を促す工作も日常的に行われている。

 何より、国家による大量監視は自由な言論を窒息させ、民主主義を死滅させる。常に警察が摘発の目を光らせているとなれば、人びとは疑われたり怪しまれたりしないように政府批判ととられかねない言動を慎んだり遠ざけたりするようになるだろう。そうした萎縮効果を安倍政権は狙っている。「関係ない」者はいないのである。

 戦争へ向かう政府の動きにも反対の声を上げさせない。そういう意味で、共謀罪の導入は安倍が狙う「2020年新憲法施行」の準備行為といえる。絶対に阻止しなければならない。     (M)

・参考文献『スノーデン 監視社会の恐怖を語る』(小笠原みどり著/毎日新聞出版)

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