2017年05月26日 1478号

【みる…よむ…サナテレビ(439) 2017年5月6日配信 イラク平和テレビ局in Japan/イラクの文化遺産を金儲けに使うな】

 イラクのアバディ政権は、バグダッドにある有名な文化遺産キシュラ地区を取材するジャーナリストから高額の入場料金を取ることを決定した。サナテレビは2017年3月、メディアの正当な取材活動への料金徴収に怒る市民にインタビューを行った。

 番組で見ていただくキシュラ地区の時計台は、オスマントルコの統治時代であった1855年に建設された世界で最も古い時計台の一つである。イラク占領などによって管理が徹底せず、荒れるに任されていたが、最近ようやく整備され、多数の観光客が訪れている。

 ところがイラク観光省は、国際的にもよく知られるこの歴史遺跡を取材するジャーナリストに10万ディナール(約9千円)もの入場料金を請求している。普通の観光地の入場料金と比べて数倍、いや、おそらく十数倍も高い「料金」だ。

 市民も「こんなことに入場料金をかけるのは驚き」とあきれ顔だ。高額の入場料金を取られる立場にあるサナテレビのインタビュアー、サジャド・サリームさんは「ジャーナリストに仕掛けられた戦闘だ」「抑圧的な政策だ」「新しい手口の窃盗だ」「メディアの専門家を犠牲にした汚職だ」とメディア関係者の反発を報告している。

文化行政も食い物

 なぜ、政府はこんなことを行うのだろうか。2003年の占領以来、「自己資金調達制」によって、イラクでは国営企業だけでなく、観光省のような役所でさえ職員の賃金を自前で調達しなければならないからだ。

 石油資源による莫大な利益はグローバル資本と腐敗政治家に回り、文化行政も切り捨てられている。あくどいアバディ政権の本性の一端がここでも現れている。

 日本でも4月、山本地方創生相が観光振興のための文化財活用について「一番のがんは学芸員」「観光マインドが全くない。一掃しなければ駄目だ」と暴言を放った。文化遺産を金儲けの手段としか考えない発想は全く同じだ。グローバル資本とその手先たちの発想と行動はイラクでも日本でもよく似ている。

 資本の利益のために文化行政さえ食い物にするアバディ政権。批判の声を上げるイラクのジャーナリスト、市民に連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

http://peacetv.jp/


ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS