2017年06月02日 1479号

【「国に逆らう自治体、政治家は潰す」 不当な国立市上原元市長への賠償請求 基金で地方自治を守ろう】

 自治体首長は、選挙時に掲げた公約を実行する責務を負い、実行したことをもって個人の責任は問われない。当たり前のことだ。しかし今、政府の意に沿わない首長に対して、首長個人に賠償請求をし、自治体首長を萎縮させ、憲法の保障する地方自治を破壊する動きが始まっている。元国立市長の上原公子(ひろこ)さんに迫られた4500万円もの「賠償金」支払いと、この判決を「先例」にした安倍政権の翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事個人への損害賠償請求の検討である。改憲を先取りする安倍の平和と地方自治破壊のもくろみを許してはならない。

不当な4500万円請求

 上原さんに4500万円もの「賠償金」支払いが迫られている。ことの発端は国立市の高層マンション建設問題。1999年、国立市の並木道沿いに高層マンションを建設するという計画が持ち上がり、市民らは猛反対。国立市は、景観を守りたいという住民の意向を受けて、並木と同じ高さに制限する景観条例を定めた。これに対し業者は、条例は無効として国立市と上原市長(当時)を訴えた。裁判所は、条例は適法としつつも、「営業妨害した」との業者の主張を認め、市に賠償を命じる判決を出し、最終的にこの判決は確定。しかし、賠償金3000万円を受け取った業者は「賠償が目的ではない」と同額を市に寄付し、市に損害は発生しなかった。

 ところが、一部の住民が09年に市に対し、「市長当時に市民を扇動し営業妨害した」と上原元市長個人に賠償を求める訴訟を起こした。東京地裁はそれを認める不当な判決を言い渡した。当時、上原さんの後継であった関口博市長は、これを不服として控訴したが、11年に上原さんに賠償を求めるとする佐藤一夫市長が当選し訴訟を取り下げて判決が確定し、支払いを求めて佐藤市長が11年12月に上原さんを提訴。この裁判では、14年9月に地裁は上原さんの行為について「あくまで景観保持という自身の掲げる政治理念に基づいた行動であり、私的利益を得ていない」として市が上原さんに求償することは認められないと正当な判決を出した。しかし、高裁は15年12月上原さんに支払いを命ずる真逆の不当判決を行い、昨年末の最高裁上告棄却に至った。

 こうして上原さんは、町の景観を守り市民の自治で町づくりを進めるという市長として当然の取り組みを行ったことに「責任をとれ」と言われ、高額の「賠償金」支払いまで押しつけられてしまった。まさに「歴史に汚点を残す決定」(上原さん)だ。

地方自治の本旨を無視

 最高裁が追認した高裁判決の最大の問題点は、憲法が定める住民自治に支えられた団体自治という「地方自治の本旨」を理解せず、ないがしろにしたことだ。上原さんの行為は地域住民の自治に基づく景観保護の運動を踏まえて、首長として行った当然の行為であった。地裁判決の通り、上原さん個人の責任に帰すべきものではない。

 もう一つの問題は、営業妨害の理由として「地方公共団体の長は…中立性を保つ必要がある」としたことだ。首長は、その政治理念に基づいて政策を実現するための政治活動を行う自由がある。民意の裏付けがあり、住民自治に支えられた政治活動に「中立性」が要求されるはずもない。

 極めて不当なこの判決は、安倍政権に従わず市民の声を体現しようとする首長の行動・発言を萎縮させ、ひいては政治家としての首長をつぶす材料となる。

基金成功が沖縄連帯に

 この事例を先例にし、安倍政権は、新基地建設に立ちはだかる翁長沖縄県知事個人への国家賠償法による損害賠償を求めることが「あり得る」(3/27菅義偉〈よしひで〉官房長官)と検討を始めている。辺野古新基地建設阻止を公約に掲げ当選し、民意に支えられて建設阻止へ行動する翁長沖縄県知事個人を、「権限乱用」の名で数億円規模の賠償を求めるというものだ。政府は、上原さんの不当判決を出した小林昭彦裁判官を2月の異動で福岡高裁裁判所長に「栄転」させた。上原さん個人への不当判決が沖縄新基地建設とリンクし、平和と地方自治を破壊しようとしている。憲法も法令も無視した言語道断の賠償請求を許してはならない。

 こうした状況で、「その4500万円!元市長ひとりに払わせない!」と「くにたち上原景観基金1万人の会」が結成された(2/11)。上原基金の達成は、安倍の脅しには屈しない市民の取り組みであり、沖縄基地建設を強権的に進める安倍の戦争国家推進に抗す大きな意義がある。上原さんに「賠償金」を1円たりとも支払わせず、政府の平和と自治への破壊のもくろみを打ち砕くため、上原基金を市民の手で達成させよう。

《募金受付特別口座》
みずほ銀行 日野駅前支店
普通預金口座 1222665
名義人 日野市民法律事務所 弁護士窪田之喜(くぼたゆきよし)

《上原公子さんガンバレ 平和と自治の破壊を許すな!―とりもどそう 私たちの住民主権 5・27集会》
5月27日(土)14:00〜
ぱる法円坂・大阪市教育会館

 

 
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