2017年06月02日 1479号

【安倍「2020年改憲」宣言 何が何でも9条改憲に突入 憲法もてあそぶ暴走にSTOP】

 衆院法務委員会で共謀罪法案を強行採決した安倍政権。ますます拍車のかかる暴走は改憲を照準にすえる。5月3日、安倍は2020年の東京五輪開催に合わせて「改正」後の憲法を施行したいと発言した。自らに課せられた憲法尊重擁護義務(第99条)を公然と投げ捨て、オリンピックイベントまで利用して改憲を押し通そうとする姿勢は、憲法を私物化し、もてあそぶもので断じて許されない。

無制限の派兵、武力行使へ

 安倍政権が今回持ち出したのは、憲法9条の戦争放棄の1項、戦力不保持を定めた2項をそのまま残しつつ、新たに3項を加え、自衛隊の存在を明記するというもの。改憲の本丸、9条に手をかけた。

 仮にこの案が実現すると、憲法9条の中で2項と3項が正反対の内容を持つことになる。説明不能な矛盾だが、2項を残すことで改憲のハードルを下げる狙いがある。3項で自衛隊が明記されても、自衛隊は「戦力」に当たらない、あるいは2項が残っているから現状を追認するだけで今までと変わらない、とごまかし、9条改憲反対の世論をかわそうとするものだ。

 多くの憲法学者が指摘するように、9条に自衛隊を明記する3項が加われば2項は空文化する。それこそが安倍政権の狙いだ。自衛隊の存在が最高法規である憲法によって「公認」となることで、自衛隊=軍事力は一切の憲法上の制約から解放され、いつでもどこでも自由に派兵、武力行使が可能になる。

 戦争法だけでは簡単に踏み込めない先制攻撃も可能な戦争国家への道を全面的に開く3項追加など到底許されない。

究極の五輪政治利用

 憲法審査会の議論が始まったばかりの時期に、安倍は「東京五輪に合わせた改憲」を目標として設定した。

 五輪憲章はスポーツを政治利用してはならないと謳(うた)う。だが、オリンピックは歴史上常に政治利用にさらされてきた。ナチス支配下でヒトラーが開会宣言をした1936年ベルリン五輪、ソ連(当時)のアフガニスタン侵攻に「抗議」して西側諸国がボイコットした1980年モスクワ五輪はその典型だ。

 安倍もまたオリンピックを徹底して政治利用する。福島原発の汚染水の「アンダーコントロール」発言は結局、被災者切り捨てと避難者の強引な帰還政策につながった。新国立競技場などのハコモノ建設でゼネコンとグローバル資本だけが大儲けしている。

 この上の「2020年改憲」発言だ。改憲案が国会でのまともな議論に耐えられないと見て、オリンピック騒ぎのどさくさに紛れナショナリズム高揚を利用して改憲を実現しようとする野望を露わにした。同時にこの発言は、改憲議論が進まない現状に対する安倍の焦りの反映でもある。

憲法の権利実現こそ

 安倍をはじめとする改憲論者は、改憲理由に「社会経済、国際情勢の変化」を持ち出す。「東アジアの安全保障環境変化に対応するため」「現憲法では教育無償化に対応できない」などを名分にする。

 だが、日本国憲法は「人類普遍の原理」から出発する。基本的人権の尊重、平和主義、国民主権―憲法のこの基本的原理は日本のみならず、人類社会が目指すべき方向性を示すものであり、一時の国際情勢、社会情勢に左右されるものではない。時代が変わったから基本的人権が不要になる、国際情勢が変わったから平和主義や民主主義の原理に後退が必要になるなどあり得ず、憲法の基本原理は改正の対象とはならないのである。

 安倍自民の補完勢力である日本維新の会は、現行憲法では教育の無償化ができないとして改憲を求め、安倍発言はそれに応じた。どす黒い改憲の野望にデマで装飾を施すものにすぎない。

 子どもたちに教育を受ける権利を等しく保障し、民主主義的市民を育てることは現在も未来も変わることのない政府の責務だ。日本政府は1979年に国際人権規約を批准しながら中・高等教育の段階的な無償化を定めた条項を留保していたが、2012年にようやく撤回。教育無償化は現憲法の解釈で十分に対応できることを事実で示すものだ。

 安倍は、改憲に反対する野党に対し対案を出すよう求める。これも変えることが前提の暴論だ。必要なのは現行憲法を真に実現することであり、「改正」のための対案など不要だ。とにかく改憲の既成事実を作り、宿願の9条改憲につなげようとの野望が見える。安倍の野望で基本的人権を奪い、戦争をする国に変えるなどもってのほかだ。

 改憲を党是とする自民党は政権獲得以来、一貫して憲法を破壊し、ないがしろにしてきた。原発、軍拡を推進し、民営化と新自由主義で格差社会と貧困をもたらした。福島、沖縄を無法地帯≠ノし、マイノリティへの憎悪とヘイトクライムをあおり続けた。

 求められるのは改憲ではない。政治・経済・社会のあらゆる領域で憲法に保障された内容を真に実現することである。これが、憲法破壊を続ける安倍と自民党政権に対する私たち市民の回答だ。

安倍の2020年改憲メッセージ(要旨)

 私たちは、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための、「具体的な議論」を始めなければならない、その時期に来ていると思います。

 例えば、憲法9条です。私は、少なくとも、私たちの世代の内に、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。

 もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは、国民的な議論に値するのだろう、と思います。

 教育の問題。子どもたちこそ、我が国の未来であり、憲法において、国の未来の姿を議論する際、教育(無償化)は極めて重要なテーマだと思います。

 私は、かねがね、半世紀ぶりに、夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました。2020年を新しい憲法が施行される年にしたい、と強く願っています。

 憲法改正に向けて、ともに頑張りましょう。

(5月3日「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などの公開憲法フォーラムより)

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