2017年06月09日 1480号

【原発賠償京都訴訟が最終盤 9月結審、来年3月勝利判決へ 法廷闘争と共に社会に広げる】

全原告が法廷で証言

 5月26日京都地裁で、原発賠償京都訴訟第28回期日が開かれた。大法廷満杯の傍聴者が見守る中、9人の原告が証言。それぞれ「被ばくから子や孫たちを守るために避難した」「避難先でも様々な困難に直面した」「国と東電は非を認めて責任をとってほしい」と切々と訴えた。

 昨年12月から始まった原告全世帯代表者への尋問は、今回でほぼ終了(53世帯)した。法廷では、原告一人ひとりが避難の実情、被害の実相を短時間で主張するとともに、加害者である国と東電から執拗な反対尋問を受けなければならなかった。原告たちは、大法廷を埋めた傍聴者の熱気を背に、被告に対して明確に反論した。その思いは裁判所にもしっかりと伝わったはずだ。

 裁判は今後、最終準備書面提出を経て、9月29日結審となる。判決は2018年3月29日。京都訴訟は大きな山を越え、勝利判決を獲得するための最終盤の闘いに入った。それは、群馬訴訟判決の課題(低額な賠償額の認定)を突破することである。

群馬判決の課題突破へ

 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会は5月20日、第3回総会と「原発賠償京都訴訟の勝利をめざす市民のつどい」を開催した。つどいでは、この1年間の闘いを振りかえるとともに、立命館大学・吉村良一教授から「群馬訴訟判決の評価と各地の集団訴訟の争点」と題して講演を受け、群馬訴訟判決を乗り越えて勝利判決を獲得する方針を確認した。

 吉村教授は、群馬判決は「国の責任を明確に認め、その責任は補充的なものでない」とした点に意義があると強調した。国策として進められてきた原発の事故に関する国の責任を裁判所がはっきりと認めたのだ。一方、問題点として「判決が認容した慰謝料が少額にとどまっている」と評価した。

 群馬判決は「避難指示の基準となる年間20_シーベルトを下回る低線量被ばくによる健康被害を懸念することが科学的に不適切であるということはできない」「同様の放射線量の被害が想定される状況下においても…避難を選択する者もいれば、避難しないことを選択する者もおり…いずれも合理的ということがありえる」「個別の原告が置かれた状況を具体的に検討することが相当」と判断した。つまり、避難指示区域外からの避難について合理性を認めたのだ。

 また、避難指示基準とされる年間20_シーベルトについて、「現存被ばく状況においては最高値なのであるから…避難指示が解除されたからといって帰還をしないことは不合理とはいえない」と、帰還しない、できないことの合理性も認めている。

 ではなぜ低額の慰謝料なのか。吉村教授は、認定された慰謝料額が避難指示区域とそれ以外の避難者で大きな差があることから、判決が認めた被害は「自己決定権を中核とする平穏生活権」の侵害とみているのではないか、と指摘する。

公正判決署名3万筆を

 群馬判決を乗り越え、京都訴訟で完全賠償を実現するために、私たちはどう闘うか。

 京都訴訟では、平穏生活権は「生存権、身体的・精神的人格権及び財産権を包摂した利益であり、必ず原状回復されなければならず、それまでは権利侵害が継続する」と主張している。原告は全世帯代表者が自らの避難の実態と被害の実相を生々しく証言してきた。それらの上に立って、法廷闘争では、原告は損害の内容を整理・補充する書面を提出する。弁護団は、損害論を補強し最終準備書面にまとめる。

 法廷外では、原告団は自分たちの訴えを本にまとめ、社会的に広げる方針だ。支援する会は、結審まで計2万筆、11月末までに計3万筆の公正判決署名を集めることを決めた(現在約1万2千筆を裁判所に提出)。6月からは原告とともに街頭署名行動も再開する。9月29日の結審には全国からの結集を呼びかけ、裁判所に民意を示す。

 原告団、弁護団、支援する会3者が全力を出し切って勝利判決獲得をめざす。

 みなさまの支援・連帯を心からお願いします。

(原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会 奥森祥陽)

◆署名用紙等詳しくは、支援する会ウェブサイト支援する会ブログ参照



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