2017年06月16日 1481号

【高浜3号機再稼働強行糾弾 世界の脱原発潮流に逆行】

 関西電力は、福井県高浜原発3、4号機の運転差し止めを認めた大津地裁の仮処分が3月に大阪高裁で取り消されたのを受け、5月、早くも4号機の再稼働を強行。3号機も6月6日、再稼働が強行された。さらに原子力規制委員会の「安全審査に合格」した福井県大飯(おおい)原発3、4号機、福岡県玄海原発3、4号機も早ければ年内の再稼働が狙われている。福島第1原発事故で明らかになった問題は何ひとつ解決しておらず、命と安全を無視する暴挙だ。

問題、何も解決せず

 「原発に近い我々が再稼働協議の蚊帳(かや)の外に置かれているのはおかしい」。こう不満を露わにするのは元福井県小浜市議会議長の池尾正彦市議だ。「福島の事故を見て、タブーだった脱原発へ政治生命をかける時だ」と考えた池尾議長(当時)らが中心となり、小浜市議会は2011年6月、原発からの脱却を求める意見書の全会一致での採択を実現した。高浜、大飯、美浜の各原発からいずれも10〜30キロメートルの至近距離にあるにもかかわらず、再稼働への同意権はない。「再稼働を拒否できないのに、事故発生時に被害だけは押しつけられる」という問題は事故前と何ら変わっていない。

 規制委が審査の対象としていない避難計画に関しても事故前そのままだ。新規制基準の作成に関わった勝田忠広准教授(原子力政策)は「避難計画について、議論がされないままになっている」と指摘。再稼働容認の学者からさえ、安倍政権のなし崩し的再稼働に批判の声が上がる。

 高速増殖炉「もんじゅ」廃炉が決まり破たんした核燃料サイクルの検証は行われず、核のごみの処分地が決まらない現実も変わっていない。NUMO(原子力発電環境整備機構)は「次世代にツケを残さないため、現世代で処分方法を決める」と繰り返すが、再稼働反対を訴える市民の声には応えない。処分地も処分方法も決まらないのに、再稼働でさらにごみを増やす政府・原子力ムラのやり方こそ次世代に対する犯罪だ。

 何よりも最大の犯罪は、帰還困難区域と大勢の避難者切り捨て、居住制限区域を含めた高線量地帯への帰還強要、そして185人もの子どもたちが甲状腺がんになっているにもかかわらず、切り捨てられていることだ。

プルサーマルから稼働

 再稼働した高浜4号機は、昨年8月に再稼働した伊方原発3号機と同じプルサーマルだ。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を燃料とするもので原発の中でも最も危険だが、電力各社はむしろプルサーマルから順に再稼働している。

 日本は現在、非核保有国で唯一、プルトニウムを保有しており、その量は48トンに上る。プルトニウムは核兵器への転用が可能であり、日本は5500発もの核兵器を製造する能力を持っている。日本に対する国際的な懸念が強まる中、プルトニウム「消化」が期待されていた「もんじゅ」も廃炉に追い込まれた。電力各社がプルサーマル優先の再稼働へ駆り立てられているのにはこうした背景がある。

世界は続々と脱原発

 世界最悪級の原発事故を起こしながら、原発再稼働・輸出へ異常突出する日本とは正反対に、世界は着々と脱原発に向かっている。すでにドイツ、ベトナムが脱原発に転換。台湾は脱原発を定めた改正電気事業法が立法院(国会)で成立した。スイスでは5月21日、脱原発・自然エネルギー推進へ電力政策を転換する案に対する国民投票が行われ、58%の賛成で可決された。26州のうち22州で賛成が反対を上回る圧倒的な民意だ。

 日本同様、原発推進・輸出促進政策が続けられていた韓国でも、5月、脱原発を公約に掲げた文在寅(ムンジェイン)が大統領に当選。国営「韓国水力原子力」は新設予定の原発2基の設計作業を中断した。

 最大の原発大国・米国では、1979年に炉心溶融事故を起こしたスリーマイル島原発1号機の廃炉が「不採算」を理由に前倒しされる見通しだ。スリーマイル島原発は事故を起こした2号機とあわせ、これで全基が廃炉となる。

 福島事故が収束しないばかりか、健康被害対策も避難計画も核のごみの処分方法も確立されず、その上コストも高い危険な原発再稼働を次々と強行する安倍政権。世界の潮流に全く逆行している。福島原発事故を経験した日本こそ、全原発廃炉へ向けたエネルギー政策の転換が必要だ。

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