2017年06月16日 1481号
【みる…よむ…サナテレビ(441)/2017年6月3日配信 イラク平和テレビ局in Japan/なぜ、学校の前に歩道橋がないのか?】
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バグダッドでは、必要もないところに歩道橋が作られる一方で、車の交通量が多く危険な場所に歩道橋が作られていない。2017年3月、サナテレビはこの問題について市民や学生にインタビューした。
イラクの都市部は車社会。地下鉄はなく、他の鉄道もほとんどない。自動車での移動が一般的だ。かなり広い道路を自動車が高速で走り去る。多くの人が車道を横断する場所には歩道橋が当然必要となる。
ところが、現在のイラクでは奇妙な光景が見られる。ほとんど人通りのない場所に歩道橋が作られている。その一方、毎日多くの生徒が通う小学校の前には「歩道橋は全くありません」という状態になっている。
ある市民は「バグダッド市当局が(人通りがほとんどない)酒屋の前やお年寄りの家の前に歩道橋を建てる」とあきれ顔だ。そんな歩道橋があるのだが、市民は「誰も使っていません」と言う。
サナテレビは自動車の通行が非常に多い大学の正門前で学生たちにインタビューした。映像では、広い通りをほとんどブレーキもかけずに高速で走る自動車の合間を縫って学生たちが走り抜け、大学に行き来している。とても危ないことが一目でわかる。
学生たちは「交通事故に遭った学生もいる」「毎日道路を渡るために1時間も待っている」「ここでは女子2人と男子1人が死んだ」と深刻な実態を口々に訴える。「毎学期、交通事故で多数の死者が出ている」というひどい実態だ。インタビューは「今朝、私が事故に遭わずにすんだのは奇跡でした」という学生の告発で締めくくられる。
なぜ、こんなことになっているのか。それは、アバディ政権が歩道橋の建設費用まで汚職に利用しているからだ。そのために、交通事故の死者がたくさん出ている学校の前にも歩道橋が全くないという事態が起こってしまう。
もちろん市民や学生はこんな状態を傍観してはいない。行政当局に要求しているし、学生の怒りを受けて大学の副学長も行政に対して歩道橋建設を要請している。サナテレビは、映像を通じて人命をかえりみない行政当局に市民・学生の抗議と事態改善への要求を突きつけている。
(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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