2017年06月23日 1482号

【みるよむ(442) 2017年6月10日配信 イラク平和テレビ局in Japan バグダッドの遺跡を守ろう】

 バグダッド南部ムワイディヤ地区にあるカーン・サビールは、イラクで最も古い隊商(キャラバン)宿の遺跡で、500年前からの歴史を持つ。

 今回の映像が映し出す遺跡の外観は、長い年月が流れている割には建物全体として保存されているように見える。しかし、中を見ていくと、4本の柱が崩れ落ち、傷みも目立つ。かつては散らかったゴミで一杯だったという。

 番組の原題は「イラクのカーン・サビール遺跡への意図的な無視」である。イラクの歴代政府は、この貴重な遺跡をまともに守ってこなかった。いやむしろ、文化財保護の予算をおさえるために、わざと破壊に任せてきたというべきだろう。

 政府のお粗末な文化行政に対して、この地域の住民は長年遺跡保護の取り組みを行ってきた。カーン・サビールの館長によると、政府が遺跡の保存管理をわざと怠っていることは、1966年、半世紀も前に地域住民が古代遺跡局に訴え出ていた文書からもわかる。この時点から住民の遺跡を守る闘いが続いてきたのだろう。

 ムワイディヤ地区の住民は、遺跡の保護のために様々な取り組みをくり広げてきた。一つは、少額の寄付を出し合い、その資金でゴミで一杯になった遺跡の清掃をしてきたことだ。遺跡保護のボランティアに来ている若者は、カーン・サビールの救援を訴える声明を読んで共感し、友人と一緒に清掃や修理などの活動に参加している。

 遺跡の守衛を17年間務めた男性は「入場者がたくさんいたおかげで、建物が破壊されることもなく、ゴミ捨て場にならずにすみました」と語っている。カーン・サビールは、政府が何の保護もせずゴミ捨て場のようになっていた状況から、住民がお金を出し合い管理し、ボランティアが集まる中で守られてきた。

 サナテレビは、政府の文化行政の貧困を告発するだけではなく、住民自身の主体的な運動で遺跡を守り、政府の文化行政を変えようとする姿を示している。市民らは、イラク占領のずっと前から何十年もの間多くの取り組みを積み重ねてきた。サナテレビはこうした市民の闘いを広げ、文化財保護を政府に要求しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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