2017年06月23日 1482号

【日印原子力協定承認強行糾弾 核弾頭保有、ミサイル発射実験繰り返すインド 協定の発動に反対】

 日印原子力協定は、6月7日に政府・与党が参議院本会議で採決を強行し、可決・承認された。2度も核実験を強行し、核不拡散に背を向ける核武装国・インドへの原発輸出を可能にするこの協定に対し、日印両国の市民・住民は連帯して反対運動を展開してきた。衆参両院の審議では、野党議員の追及により協定の重大な問題点が次々に浮き彫りとなった。国会承認強行の暴挙を断じて許すことはできない。日印原子力協定の締結・発効にあくまで反対するとともに、インドへの原発輸出阻止の闘いを一層強化しなければならない。

核軍拡を助長する協定

 日印原子力協定は、核不拡散条約(NPT)未加盟のインドによる核兵器保有を容認し、核廃絶・核不拡散の追求という従来の政府方針を投げ捨てるものにほかならない。国会審議において、岸田外相以下政府側はこの事実を認めず、協定は「インドを国際的な核不拡散体制に実質的に参加させる取り組みだ」などと強弁し続けた。

 協定は何よりもインドの核軍拡を助長することにつながる。軍事転用防止の保障措置は国際原子力機関(IAEA)任せで、インドが「民生用」と宣言した22施設に限定される。核兵器関連8施設などは対象外となるため、民生用原発を輸入核燃料・資機材でまかない、国産ウランを軍事用に集中することで核兵器増産が可能となる。実際、原子力貿易制裁の例外扱いとなった2008年以降、インドは核弾頭の保有数をほぼ倍増させた上、核搭載可能なミサイルの発射実験を繰り返している。この問題は複数の野党議員が再三追及したが、岸田外相は明確な答弁を避け、上記の主張を繰り返すのみであった。

非現実性が浮き彫りに

 さらに根本的な問題は、この協定の目的や内容が全く現実離れしているという事実にある。実際には、ただちに「日の丸原発」の輸出に踏み出せる状況ではない。深刻な経営危機にある東芝はもちろん、三菱重工と日立もそれぞれに問題を抱え、リスクの高い海外原発事業に及び腰となっている。また、協定ではインドが再び核実験を強行した場合の協力終了が明記されていないにもかかわらず、政府は「理由の如何を問わず日本が一方的に協力終了できる強い内容だ」などと開き直った。しかし、汚染された資機材や生成プルトニウムなどをどのように返還するというのか。輸送や国内保管など、現実に生起する多くの深刻な問題を考えれば、限りなくフィクションに近い。このような協定の締結を急ぐ必要が一体どこにあるのかという基本的な疑問は、審議打ち切りにより何ら解消されないまま残された。

 こうして衆参両院の審議では、参考人質疑や野党議員による質問・反対討論を通じて数々の重大な問題点が浮き彫りとなった。とりわけ、インドが「核先制不使用」を撤回した場合や未臨界実験の実施が確認された場合の協力終了を政府が明言したこと、参院審議の終盤で6項目にわたる委員会決議が採択されたことは顕著な成果であった。

日印連帯で新たな闘いへ

 これは国会における野党議員の果敢な追及の結果であると同時に、全国の市民による反対運動をバックにして初めて実現したものと言ってよいだろう。各地の23団体・個人からなる「日印原子力協定国会承認反対キャンペーン」は、1月以降、超党派国会議員による「原発ゼロの会」の協力を得て、対外務省交渉、4度にわたる院内集会、国会前行動、全国から約8千筆を集中した両院議長宛て請願署名、審議担当委員に対するファクス行動、議員事務所訪問、衆参本会議・委員会の全審議傍聴など、国会内外で様々な活動を展開してきた。その過程で、従来関係の薄かった各団体・個人間や衆参両院の国会議員などとの連携が深まったことは特筆に値する。

 キャンペーンの一翼を担ったコアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション)では、こうしたネットワークを足がかりに、日印原子力協定の発動を阻止し、インドへの原発輸出・原子力協力に歯止めをかける新たな闘いに踏み出す。6月17日「日印原子力協定を許さない市民集会」、7月30日「第4回原発輸出反対国際連帯シンポジウム」は、そのための重要なステップとなるだろう。インド現地の運動と手をたずさえ、原発に依存しない社会を目指すインドの市民勢力と連帯して一層闘いを強めたい。

(村地秀行・コアネット事務局次長)

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