2017年06月23日 1482号

【沖縄辺野古・宮古・石垣新基地阻止 県が工事差し止め訴訟に 山城議長、国連人権理事会へ】

日本政府の不当性を訴え

 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前のリーダー山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)が6月15日に国連人権理事会で演説することが正式に決まった。5月25日那覇地裁が海外渡航を許可し、6月に延期される第2回公判日程が6月28日に確定したからだ。

 山城議長は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設抗議活動中に市民の安全を守るため有刺鉄線1本を切断した器物損壊容疑などで昨年10月に逮捕。3月まで約5か月間も長期勾留され、現在も公判中だ。沖縄国際人権法研究会など複数のNGOが、ジュネーブで開催される第35回人権理事会本会議で口頭声明(スピーチ)できるよう働きかけていた。

 6月6日インタビューを受けた山城議長は、国連人権理事会演説で、日本政府が沖縄の反基地運動に強い圧力をかけ「集会や表現の自由に大きな制約が加えられている」と訴えることを表明した。さらに、抗議活動への過剰な弾圧について「国内で止める力がない」とし、国際社会と連帯し基本的人権が保障されるよう訴えていくと強調した。

国際的批判が集中

 ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所は、6月12日に言論と表現の自由に関する国連特別報告者デービッド・ケイ氏が対日調査報告書を発表することを明らかにした。ケイ氏をはじめ国際人権法や国際人道法の専門家ら4人は2月28日、山城議長らの活動は人権を守る行為と考えられるとして逮捕や長期勾留、容疑に懸念を示し、日本における表現や平和的な集会の自由を萎縮させるとの緊急アピールを発表していた。

 6月国連人権理事会では、ケイ氏は、山城議長など沖縄における基地建設反対の抗議行動や取材への日本政府からの圧力への懸念とともに、メディアに制約を課しかねない放送法4条の廃止、特定秘密保護法の改定、日本軍「慰安婦」問題などの学校教材への介入の懸念なども報告する。

 国際的批判はそれだけにとどまらない。共謀罪についても、プライバシー権に関する国連特別報告者ジョセフ・かナタチ氏が、国際組織犯罪防止条約の締結に適合させるという日本政府の立法趣旨の適切性・必要性を疑問とし、プライバシー権への懸念の書簡を送付。世界約2万6千人の作家でつくる国際ペン会長のジェニファー・クレメント氏も共謀罪で日本の表現の自由が侵害されると反対声明を発表している。安倍政権による異常な市民の人権弾圧と報道統制などへの批判や警告が国連人権理事会をはじめ国際的に広がっている。

工事停止への仮処分も

 6月7日、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は、辺野古新基地建設で沖縄防衛局が3月末の岩礁破砕許可更新手続きを経ずに護岸工事を続けていることに対し、「差し止め訴訟を提起する」と表明した。併せて判決が出るまでの間の工事停止を求める仮処分も申し立てる。

 沖縄防衛局は、前知事の「埋め立て承認」の際に留意事項として条件に付けられていた工事着手前の事前協議について、県から何十回もの要請を無視。話し合いにも応じず、岩礁破砕許可申請の更新手続きは「漁業権が存在しないため不要」という一方的な態度をとり続けていた。

 漁業権をめぐっては、国は1月にキャンプ・シュワブ沖の臨時制限区域内の漁業権を6億円で名護漁協から買収することで「存在しない」とする。ところが、名護漁協の古波蔵廣(こはぐらひろし)組合長は辺野古とは反対側の名護市西海岸名護湾の漁民というおかしさだ。

 沖縄防衛局は漁協の漁業権放棄により岩礁破砕許可申請は不要と主張するが、那覇空港第2滑走路の埋め立て工事では、地元漁協が漁業権を放棄しても内閣府沖縄総合事務局は岩礁破砕許可申請の更新手続きを行っている。完全な二重基準だ。県はこうした点について改めて法廷闘争に持ち込み、国の不当性を立証する方針だ。 

宮古、石垣の住民はノー

 辺野古沿岸域の「K9護岸」工事を強行する政府・沖縄防衛局。同じように南西諸島への自衛隊配備も強行している。宮古島では、陸上自衛隊駐屯予定地の「千代田カントリー」を6月中にも買収し8月から工事着工という情報が産経新聞にリークされた。石垣島でも中山義隆市長の自衛隊配備了承表明を受け、駐屯地調査費用として防衛省が7億円を計上したことが判明した。どちらも既成事実を積み上げようとしている。

 しかし、宮古でも石垣でも住民との話し合いは決着していない。宮古では、予定地に隣接する野原区が反対決議をあげ、石垣でも駐屯地建設予定地周辺の於茂登(おもと)、開南、川原、嵩田(たけだ)の4公民館長らは防衛省との話し合いを拒否している。

 民意を一切顧みない安倍政権。国連人権理事会で、全国各地で、その強権的姿勢への批判が鋭く突きつけられている。安倍1強―独裁政治打倒を求める声は高まっている。

  (N)

 
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