2017年06月23日 1482号

【国連勧告にキレる日本政府/「報告は個人的見解」とデマ宣伝/安倍ネツゾウ政権の本性見たり】

 共謀罪、特定秘密保護法、そして日本軍「慰安婦」問題と、日本政府にとって都合の悪い国連の報告書や勧告が相次いでいる。安倍政権はただちに拒絶すると同時に、それらの意義を貶(おとし)める情報操作を仕掛けてきた。外務省や御用メディアを使い、国連トップの発言すら平気でねじ曲げる始末。とんでもない謀略政権というほかない。

報道への圧力を懸念

 国連人権理事会が任命したデービッド・ケイ特別報告者(言論及び表現の自由の保護担当)が対日調査報告書をまとめた。ケイ特別報告者は日本における「表現の自由」の現状を調査するため、昨年4月に来日。政府機関や報道関係者、市民団体などから聞き取りを行っていた。

 報告書は「メディアの独立性が重大な脅威にさらされている」ことに強い懸念を示している。たとえば、日本政府が放送法を根拠に放送局に電波停止を命じる可能性に言及したことは「メディアを制限する脅迫として受け取ることができる」とした。

 特定秘密保護法については「知る権利の保護範囲を狭めている」と批判。報道関係者を萎縮させないようにするなどの改正を勧告した。歴史教育の分野では、教科書から日本軍「慰安婦」に関する記述が削除されたことなどに触れ、歴史的事実の解釈に介入することを慎むよう、日本政府に求めた。

 沖縄の基地反対運動に対する弾圧にも言及している。沖縄平和運動センターの山城博治議長の逮捕・長期拘束を例に挙げ、「容疑事実に比して不適切。反対意見表明の自由を蝕む」と指摘した。

 自民党の改憲草案についてはどうか。草案が「表現の自由」を保障した憲法21条の改変や、基本的人権を「永久の権利」と定めた97条の撤廃を狙っていることに触れ、「日本の人権保護を弱体化しうる」と批判した。

 このように、英文でA4用紙19ページにわたる報告書は、「表現の自由」が損なわれつつある日本の現状を多方面から明らかにしている。自由と民主主義の抑圧者たる安倍政権の実像を世界に知らしめるレポートと言えよう(結論と勧告は別稿参照)。

強がりは孤立の証明

 当然、安倍政権は猛反発した。「指摘の大半が噂(うわさ)や決めつけにもとづくもの。不正確で不十分な内容だ」とする反論書をただちに人権理事会に送り付けた(5/30)。御用メディアも黙ってはいない。産経新聞は「国連反日報告」と名付け、「いわれなき対日批判」「嘘まき散らすのは何者か」(6/2主張)と、罵倒の限りを尽くしている。

 連中が怒り狂うのには理由がある。このところ、安倍政権にとって不都合な国連の勧告等が相次いでいるからだ。5月18日、ジョセフ・カナタチ国連特別報告者(プライバシー権担当)が安倍首相への公開書簡を発表。共謀罪法案は「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」との懸念を表明した。

 5月12日には、国連の人権条約にもとづく拷問禁止委員会が日本軍「慰安婦」問題に関する勧告を出した。勧告は2015年の日韓合意について「被害者への補償や名誉回復、再発防止策が十分とはいえない」と指摘。合意を見直すべきだとした。

 いずれに対しても日本政府は反論文書を送りつけ、拒絶の態度を示している。とはいえ、国際的にみれば孤立は明らかで、放置すれば国内世論にも影響を及ぼす。そこで連中は何とも姑息な情報操作を仕掛けてきた。政府・官僚・御用メディアが一体となり、「報告は個人的見解にすぎない。国連の総意ではない」と吹聴し始めたのだ。

外務省の翻訳詐欺

 安倍首相は5月27日、G7サミットが開かれたイタリアでグテーレス国連事務総長と会談。外務省の発表によると、「人権理事会の特別報告者は国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない」との言質(げんち)を取り付けたとされる。日本のメディアはこれを一斉に報じた。

 ところが、国連報道官が発表した英文のペーパーにそのようなことは書かれていなかった。事務総長は「特別報告者は国連人権理事会に直接報告する、独立した専門家であると説明した」だけなのだ。「独立した権限を持つ専門家」を「国連組織とは無関係の個人」にねじ曲げる。おまけに、国連側の発表のどこにもない「国連の総意を反映するものではない」というコメントまで付け加える。これはもう翻訳詐欺だ。

 「慰安婦」問題に関する発言にも歪曲がある。外務省の発表だと、事務総長は日韓合意に「賛意」と「歓迎の旨」を示したことになっているが、事実は違う。彼は「この問題は日韓両国の合意で解決されるべき」という一般論を述べたにすぎない。「特定の合意内容ついては言及していない」(国連発表)のである。

 国連トップの発言まで捏造する安倍政権の謀略体質には恐れ入る。「大本営発表」を無批判にタレ流すメディアもひどすぎる。

   *  *  *

 気に食わない勧告や報告書にキレまくり、「国連は反日勢力の牙城だ」だの、「分担金を凍結しろ」だの、声高にがなりたてる―。そのような安倍自民党のふるまいを見ていると、「満州事変は日本の侵略行為」と認定したリットン調査団の報告書を当時の日本政府が拒絶し、国際連盟を脱退した歴史が想起される。

 その後、日本は侵略国家の道を本格的に突き進んでいった。歴史は単純にくり返すものではない。だが、安倍ネツゾウ政権はあまりに危険だ。取り返しのつかないことになる前に、私たちの手で追放しなければならない。 (M)



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